内緒 ページ3
「叫ばしたの誰だっけ」
「誰やろ」
なんだかんだ言いながらも、しょっぴくんは私の背中をさすってくれる。
昔であればこんな会話屁でもなかった。アホみたいな会話を続けながらも、私達は木登りしたり山を駆け上がったりなど、激しい運動もしていた。
まだ癌が見つかる前の話だけれど。
「しょっぴくんありがとね。幼馴染とはいえ癌が見つかった人のそばにいるのは面倒でしょ？」
「面倒かったら昔に縁切っとるやろ」
「………それもそうだね」
私達の関係は、という質問は何回もされていた。
幼稚園の時から例外はあれど、ほとんど一緒にいたから、『付き合ってるんじゃないの？』と言って槍玉にあげられていた。
私もしょっぴくんも、真面目に取り合わずに受け流してきた。
どうせただの幼馴染だから。それ以上の関係もなければ、それ以下でもない。不安定な関係。
「あ、もうそろ時間やから帰るわ。またな」
「うん、バイバーイ」
結局しょっぴくんは面会時間ギリギリまでいてくれて、話し相手になってくれた。
しょっぴくんが帰ると、静寂が部屋を満たす。静かな静かな病室は、私に現実を突きつけるには充分だった。
「………嗚〜呼、後一年だって。いや、正確には一年以内か。短いな〜」
私は強がりだ。
死ぬって言われても、『そっか』としか言えないほどに。もがこうとは思わない。それは本心だった。
でもだからといって死が怖くないわけではない。普通に恐ろしい。
今まで築き上げてきていた人間関係が、友情が、恋心が、全て無になって消えてしまうと考えただけで、身震いしてしまうほど怖い。
「ごめんね、しょっぴくん。死が近いことを悟った時、頭の中を占めたのは君だけだったんだよ？」
最後の時まではいつものAで居続けるから、
君がいない時だけは、弱気でいさせてね
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作者名：ニーナ | 作成日時：2022年2月28日 16時
