抱えきれないほどの愛を貴方に【shp】 (ページ11)

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別れページ11

病院に着いたとき、Aは病室にいなかった。

案内されたのはガラスで覆われた、機械のたくさんある部屋の前だった。
部屋の中央にベッドが一つあり、そこにAが呼吸器を繋げられて横になっていた。以前見た時より衰弱している。

「ふざけんなや………勝手に突き放してはいさよなら？納得できるわけないやんけ」

涙が込み上げてきて、頬を伝っていく

「自分勝手すぎるんや。おいA………お前が俺らにとって、俺にとってどんなに大切かわかっとんのか？
勝手に決めつけて離れていくな。ずっと一緒におるって約束したやんけ。俺を置いて行かんどいてや」

ガラスに手をついて、その手を握りしめる。声が届いていなくても、もう構わなかった。
Aは薄く目を開けると、こちらに顔を向けた。俺の姿を見咎めると、その瞳から涙が流れていった。

彼女はゆっくりと口を開くと、声にならない声で、『ごめんね』と口を動かした。

それから、もう一言。

『わらって』

理解すると涙が溢れる。彼女の要望に応えたくて、でも流れる涙を止める事ができなくて、歪んだ笑顔になる

「馬鹿や………ないの………」

彼女はそんな俺の笑顔に苦笑をこぼしてから、ゆっくりと瞼を閉じていった。

そしてすぐ後になる乾いた機械音。それはAの命が尽きた音だった

看護師や医師が入っていき確認したが、もうそこにAはいなかった

その時の俺がどんな顔をしていたかわからない。

頬を伝う涙が、泣いているということのただ一つの証明でしかなかった