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「成程ねえ。Aくんの云うことはよくわかった」
「私は反対じゃが…Aが云うのならばそうしてもいいのではないか?鷗外殿」
「ふむ…。確かに探偵社と利害は一致するだろう。しかし同盟や停戦協定となると様々な問題が発生してくるのだよ」
『…わかっています』
“どちらかが協定違反をしたとき、罰するものがいないこと”。首領が云っていたことだ。それでも私は。
『私は、向こうが裏切るようなことはしないと思います』
「何故かね」
『太宰がいるからです。太宰は私を守ろうとしている。だから、私が危険にさらされるようなことは一切しないと思います』
「一理あるね」
「中也も呼んで会議をせぬか?勿論あやつは賛成じゃろうが」
『じゃあ私、呼んできますね』
・
中也を呼んで再び首領執務室へ。ドアの前に立つとぼやけたような声が少し聞こえてくる。一度呼吸を整えてドアをノックして名乗り、数分ぶりに足を踏み入れた。
「すまないね、わざわざ」
「いえ。首領と姐さんがお呼びなら」
「それでどうなのじゃ?探偵社は私らを信じるかのう」
『そこは太宰に任せればいいかと』
「何なら探偵社とポートマフィアで一人人員を交換するのは如何ですか?それならお互い手は出せないでしょう」
「人質ということか。成程のう」
『中也天才?』
首領は何も云わず、にやりと笑った。首領もそれで納得したようだ。
「ではAくん、探偵社との密会の予定を立ててくれ給え」
『かしこまりました』
・
その日の夕方、私は一人で探偵社を訪ねた。ノックして扉を開く。そこに居たのは与謝野医師と国木田さんだけだった。
『こんにちは』
「おやァ、Aじゃないか。怪我でもしたのかい?」
「何だ小娘。奇襲は受け付けんぞ、人手が足りん」
『安心してください、怪我もしてなければ奇襲でもありませんから』
「そりゃあ残念だねぇ」
今日の探偵社は珍しく静かだった。人もほとんど出払っているようで、やけに広く感じる。
というか、奇襲をするならこんなに丁寧に扉を開くわけないでしょう…。与謝野医師のところにいくほどの大怪我もしてないし…。敵組織の構成員が来たっていうのにこんなにゆるりと話をするのもどうかと思うが。私もだけど。
「それじゃあ何の用だ」
『あの、社長居ますか?お話があります』
「直接攻撃する気か?」
『違いますって。そもそも敵う訳ありませんよ』
微笑を浮かべて応えると国木田さんもふっと笑った。
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作者名:九ノ瀬 杏璃栖(ここのせ ありす) | 作成日時:2019年6月8日 8時