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遅くなってしまい申し訳ありません。
​───────

只今首領執務室の前。手には恐ろしいほどの汗と引き攣る顔。心臓が飛び出しそうってこういうことだよ…。
私がこんな状態になっている理由は二つ。まず先日太宰と中也と食事をした時に話した、探偵社と手を組むということを“一人で”首領に提案しに来ているため。二つ目は何故か​───────姐さんとばったり会ってしまったこと。そして今私の隣にいらっしゃる!…首領だけでも怖いのに姐さんまで居たら死んじゃうんじゃないかな…。


「どうかしたのかえ?A」

『い、いやいや、何でもないです』

「それにしては顔が引き攣っておるぞ?」


ば、ばれている。見上げるとぱちりと姐さんと目が合う。なにか探るような視線を感じる。あわわわ、一寸これは無理かもしれない…。


『ちょ、ちょっと込み入った用があって…あの、取り敢えず首領のところに行きません…?』

「それもそうじゃ。私も用があるのでな」


なんとかこの場は乗りきった。問題はここからだけど…。
二人で挨拶をして首領執務室に入る。首領は机の傍らでエリスちゃんと話していた。扉の開く音でこちらに気づいたようで、エリスちゃんに何か云って私たちの方を向いた。


「Aくんと紅葉くんが一緒だなんて珍しいね」

「丁度此処の前で会ってのう」

『ばったり会ったので』


苦笑いで応える。


「それで何の用だい?」


首領の問いに私と姐さんは顔を合わせた。私は姐さんが先に話すよう促す。


「私は報告書を出しに来ただけじゃ」

「ああ、ありがとう。受け取るよ」


首領はさっと報告書を眺めてから云った。


「Aくんの用はなんだい?」

『あ、あの、実は……。探偵社と手を組みませんか?』

「ほう?」

「何を云い出すかと思えば…Aが珍しいのう」


二人とも否定も肯定もせず、不思議そうに私を見つめた。視線に促されて私は続ける。


『ついこの前まで探偵社は魔人とも組合とも接触はありませんでした。しかし最近、探偵社も魔人と組合に狙われて攻撃を受けています。この間まで関係はありませんでしたが、今となっては魔人と組合を敵とみなすポートマフィアと同じ立場にいます。この街の二大異能組織であるポートマフィアと探偵社が手を組めば、魔人と組合の攻撃からこの街と我々を守ることは確実に可能だと思います。難しいこととはわかっていますが、どうか考えてみてください。』

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作者名:九ノ瀬 杏璃栖(ここのせ ありす) | 作成日時:2019年6月8日 8時

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