青の瞳 (ページ9)

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待って待ってあの本当にしんどい。目の前でアリス石を強化するために高校長が手で包んで目瞑って集中してるその距離が近くてちょっとは顔を自覚しろ。

私が心の中でぎゃあぎゃあと騒いでいるうちにも高校長は作業を進めていく。しばらくして終わったようなので見てみれば、石は先程よりも強く色を放っているように感じられた。高校長はそれを見ると満足気に頷いて、手を離した。

「これで問題無い筈だが、油断は禁物だ」
「はーい」

赤くなっていたであろう顔をパタパタと扇ぎながらティーカップに口をつければ、ふ、と笑んでその大きな手が私の頭をしっかりと撫でる。それ逆効果だよ、むしろ今真っ赤だよ。固まっている私をよそに高校長はまた私をジッと見る。今度は何かと問えば、いや、と遠慮がちに口を開いた。

「……まだ、15歳か」

……はい？ええ、そうですけど。そう答えれば、そうか、いや、いいんだ、なんて歯切れの悪い自己完結した返事しか返ってこない。この人が何かを言うときに遠慮するなんて珍しい、と思っていればこれだ。何が言いたいんだろう。

「誕生日は2月29日だったな」
「え？ええ、はい。正確に言えばまだ誕生日って３回しか来てないからまだ3歳ですけどね！」
「あと約半年か……」
「おい」

あまりにも高校長が自分ワールドで思考を始めてしまったのでついつい、おい、なんて言葉が口を衝いてしまった。渾身のギャグをスルーされて辛かったんだよ。もう高校長はとりあえず置いといて、私は校長室の物色を始めた。

「わ、この本高そー……」

分厚い装丁の本が多く、思わずそう呟いてしまった。ちょっと馬鹿っぽかったかも知れない。どうせ難しい内容なんだろうなと思いながら１冊手にとって数ページをペラペラと捲ってみれば思った通りで、元の場所へそっと静かに戻した。

「A、来なさい」

それでも諦めずに読めそうな本を探していると、高校長から声が掛かる。振り返ればその強い瞳がこちらを見つめていて、私はすぐに駆け寄った。最近この人は目で訴えてくることが多い気がする。

側に寄ればスルッと腕が伸びてきて高校長の隣に座らされた。なんで隣？と首を傾げ見上げれば、わしわしとまた頭を撫でられる。なんだこれ。

「わ、あの、せんせ」
「A」
「え？はい」
「……大事な話がある。聞いてくれるか？」
「そりゃ、まあ」
「……そうか」

そう言って高校長は安心したように息をひとつ吐いて、私はぎゅうと抱き締められた。

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