＊ ページ12
「ま、またまたそんな御冗談を…」
「冗談じゃないって事、あとで分からせてあげる」
「…」
その発言に私はなんて返すのが正しいのだろう…あとでって…いつ？
どうやって分からせてくれるというの？もしかしてこれ…からかわれてるだけじゃ…。
＊＊＊＊＊
と、グルグル考えてるうちに場面は家のそばにある駐車場に切り替わっていた。
隣を見てみると、運転席でエンジンを切る櫻井くんの姿。
シートベルトで押し付けられていた私の心臓は、なぜだかドンドンと鼓動を叩き上げていた。
「あ…ありがとうございます……」
「ん」
「それでは…」
「待って」
「…」
シートベルトを外そうと手を掛けた私に、櫻井くんはぐっと近寄ってきて、
「分からせてあげるって言ったよね」
私の首元に手を回した。
「あっ…あの！」
さすがにこれは私も気が付く。今から何をされるのか。
だからどうにか回避して車から飛び出したい…けど、櫻井くんの口元はあっという間に私の唇まで辿り着いて。
「俺は相葉くんやカズとは違うから」
「んっ…」
逃げられなかった。
強く押し付けられた彼の唇から、生温かいものが口の中に入ってくる。
それは初めての感触で、思わず櫻井くんの肩を叩いた。なのに、彼は止めてくれなくて。
気が付けば、目の前が滲んで見えた。
「………泣くのはズルいだろ」
「うぅっ…」
「はぁ。悪かったよ。…もう行って」
櫻井くんは私から離れるとドアのロックを解除した。
シートベルトを外す手も、ドアを開ける手も、車から降りた足も、少し震えているのが自分でも分かる。
なぜ櫻井くんは私にキスをしたんだろう。
頭の中は混乱していた。
___＿"今は相葉くんのこと忘れてよ"
___＿"モテたいよ。君だけにね"
…いや、気付ける所はいくつかあったはずだ。
自惚れでもなんでもいい、彼が私に好意を抱いていると気付いていればこんな事には、ならなかったのに…。
「きゃっ…。すみませんっ」
「………」
ぶつかった相手はスーツ姿の二宮くんだった。
ちょうど今、帰宅してきたらしい。
そして彼の視線は私ではなく、櫻井くんの居る車へと向いていた。
もしかしたらキスしているところを見られていたのではないか…。
そんな不安に襲われた私は、そのまま家の中へと逃げ込んだ。
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作者名：ミト
| 作成日時：2017年8月10日 18時
