Lv33.彼の告白 ページ36
少しの沈黙。
微かな秋の香りを乗せた風が２人の間を駆け抜けて、私たちは互いに目を合わせた。
風になびく相葉くんの前髪の隙間に見るその温かい色をした大好きな瞳は、相変わらず私の胸を締め付ける。
だけど、どうしてだろう………
「Aちゃん……君が好きだよ」
それはとても苦しく、悲しい感情に近くって。
「ずっと、こうして歩きたいって思ってた」
相葉くんが私の手を取り直した時、なぜだか涙が溢れ出した。
「私…私は……」
こんな時に頭に浮かんできたのは…さっきの映画で。…いや、今だからこそ思い浮かんだのかもしれない。
「私は今…今なら…あのヒロインの気持ちが…分かる気がします…」
「…」
「初めて観た時はなぜ彼女がＡ君からの告白を断ったのか理解できなかった…なぜＢ君に心変わりをしてしまったのかも…」
「Aちゃんにはそういう経験がなかったんだもんね？…"あの時は"」
「…」
「だけど、"今なら分かる"…それはこの告白に対して"ノー"ってことで…いい？」
「あ…いやっ…そういうわけじゃ…」
「ふふ…いいよ、嘘つかなくて」
相葉くんは控えめな笑顔を見せると、私の手をするりと離した。
「俺もちょっと…性格悪かったかな」
「…？」
「今のAちゃんがあの映画観たらどうなっちゃうんだろー…ってさ、興味本位で」
「え…」
「まぁ、ちゃんと自分の気持ちに気付けたみたいだから良かったけどね」
「自分の気持ち？」
「え？もしかして最後まで気付いてない？」
「…」
「あの映画のＡ君が俺なら、Ｂ君はカズでしょ？」
「…あ、」
そうか…。私が今、大好きな人に告白されたのにも関わらず頭でずっと思い返していた人は、二宮くんだったんだ…。
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作者名：ミト
| 作成日時：2017年8月10日 18時
