09 ページ11
＿＿数ヶ月後。
｢よぉ、A！｣
｢おっ、見事なクルミタワーだね｣
｢ああ！もう！｣
薬草の匂いが立ち込める薄暗い地下牢。テーブルの上で、一生懸命作っていたクルミのタワーが音を立てて崩れていく。犯人は言うまでもない、笑いながら通り過ぎるメガネと長髪である。
この野郎、とその後ろ姿を睨み付けていたら視界の端で鳶色が揺れた。
｢あーあ、せっかく頑張って作ってたのにね。｣
｢あっ、リーマス.......｣
散らばったクルミを傷だらけの手が拾い上げる。
白い肌に刻まれた引っ掻き傷に思わず胸が痛んだ。
彼は原作通り、
''お母さんが病気だから家に帰らないといけないんだ''
なんて、それらしきことを言って毎月どこかにいなくなることを誤魔化していた。彼は正体がばれて皆が離れていってしまうことを恐れているのだ。
そろそろ、
｢僕、薬を煎じるのはどうしても好きになれないや。｣
｢私はワクワクするから好きだけどな｣
｢わざわざ切り刻んだりしなくても、杖を振るだけで簡単に出来上がればいいのに.......｣
スラグホーンが2人1組になって、と言うので必然的に隣に居たリーマスとペアを組むことになった。自分も薬草の調合は得意な方ではないけれど、少しでも才能があれば''脱狼薬''の調合が出来るかもしれないから、とそんな密かな期待を込めて魔法薬学の授業を受けていたのだった。
因みに彼が魔法薬学が苦手なのは、マグル的な理論の考え方が苦手だから。DADAの成績は優秀なのに、なんて隣で教科書と睨めっこするその姿を見つめる。
｢おい、あいつ見ろよ。｣
｢誰かと思えばスニベルスじゃないか。｣
暫くして、態とらしいシリウスとジェームズの声に顔をあげる。その目線の先に居たのは一人黙々と薬を煎じるスリザリン生。セブルス･スネイプだった。
私の知る限り彼はまだリリーと一緒にいることが多く、最初から彼のことを気に入らなかったジェームズに見事に目を付けられている。
｢おい、無視か？なんか言えよ｣
｢こら二人とも、戻ってきなさい｣
｢あっ、おい！何すんだよ！｣
2人が暴走する前に首根っこを掴んで連れ戻す。
随分と不服そうに睨みつけられたが、知らぬ振りをして。
ふと振り返ると、ベタついた長い髪から漆黒の瞳が顔を覗かせていたので微笑みかけてみたが、当たり前のように目を逸らされた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 279人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
usagi(プロフ) - 哀羅さん» 哀羅様。はじめまして、コメントありがとうございます。ルーピン先生とても魅力的な方ですよね.......その魅力をどうやって文字に起こすか、常に考えながらこの作品を書いております。更新はスローペースですが完結までお付き合い頂けると幸いです＊ (2020年10月27日 6時) (
レス) id: 65ea0692b5 (このIDを非表示/違反報告)
哀羅(プロフ) - お初お目にかかります。ルーピン先生！私も一番大好きな人なんです。嬉しいです！今更ですが、一作目からゆっくり読ませてもらってます。 (2020年10月25日 19時) (レス) id: 11aacecd07 (このIDを非表示/違反報告)
usagi(プロフ) - つくもがみさん» つぐもがみ様、いつもありがとうございます＊ (2020年2月24日 17時) (レス) id: a60327fc69 (このIDを非表示/違反報告)
つくもがみ - いつも楽しく読んでます！！更新、頑張ってください！！ (2020年2月24日 16時) (レス) id: 5f5a117b2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：usagi | 作成日時：2020年2月1日 0時
