有名イラストレーターは俺の嫁。【urt】

8話(キスの日) ページ9

『わっくんわっくん』

今日も今日とて緑のバレッタをつけているA。こいつどんだけヘアアクセ持ってんだよ、と思ったこともあるが、その一部は俺が買ってやったのもあるので聞かないでおく。

うらた「どうした？」

『キス、したい』

うらた「……………は？」

おでこにするのにも照れるのに自分からキスをねだるってことは天変地異が起きない限りないと思っていた。

『ねぇ、だめ？』

うらた「駄目じゃねぇよ。ただびっくりしただけ、ほら」

軽く腕を広げてやると、大人しく腕の中に収まった。可愛いなぁ、そんなことを思いながら、ちゅ、と触れるだけのキスをする。

うらた「満足？」

『…………もっと、いっぱいして』

うらた「…仰せのままに」

もう一度唇を重ねる。歯茎や歯列をなぞって、舌を絡めて、Aが呼吸しやすいように時折隙間を開けて。

うらた「ッ?!」

『っあ………』

うらた「大丈夫？」

『だいじょぶ、じゃ、ない』

そこそこ長い時間続けていたからか、腰が砕けたらしい。

うらた「このまま座ってる？」

『ん』

うらた「水飲む？」

『いらない』

うらた「即答かよ」

『わっくんすきー』

うらた「はいはい、俺も好きだよ」

倒れ混む様にして抱き付いてきた彼女を受け止める。その流れでカレンダーを見てみると、今日は5月23日。どこで聞いたかは覚えてはいないものの、巷ではいわゆるキスの日らしい。

うらた「(可愛いことしてんじゃねーよ、ばーか)」

Aの前髪をかきあげて、露になった額にキスすると、一瞬きょとんとした顔になってから、幸せそうに笑った。

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