Only The World【オリジナル】 (ページ2)

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〈一章〉§1 古き友との別れページ2

｢…でも、本当に私で良かったの？マルシャ、あんなに行きたがってたのに｣

にぎやかな、でもどこか華やかな市場のすみで、少女はそうつぶやいた。
────少女の名はアイサ=ストラル。
長い黒髪が似合い、今年で15歳になる、少し小柄な女の子だった。

アイサはこの日、めずらしく王都へおとずれていた。
王都とは、アイサが生まれ育ったこの国、《スヴェート王国》の中心となっている都市だ。
そして、王族を中心とする、金持ち、貴族が多く住むこの王都に、平民であるアイサが足を踏み入れるなど、本来ならばありえないのだ。

そう、本来ならば。
アイサは先月、この王都にあるスヴェート王国最高の教育機関、《国立カテドラル学園》の高等部への入試を受け、見事に合格していた。
それも、満点で首席(学年トップの成績)という最高の成績で。

アイサは昔から学び、考えることが大好きだった。
気になることはとことん調べて、ひまさえあれば本を読む、そんな少女だったのだ。
そのおかげで、高い成績をとることができた。

｢もう受かったんだから、いまさらでしょ、楽しんでおいで｣

アイサと向かい合って話していた女性が、ほほえみを浮かべながら、そう言った。

実は、カテドラル学園は全寮制で、今日はその入寮日だったのだ。
女性はそのことに寂しさを感じつつも、アイサの入学を心から喜んでいた。
アイサは生まれ育った特殊な環境のせいで、今まで学校には通ったことがなかったのだ。

しかし、女性はほほえみを一瞬で真剣な表情に変え、ささやいた。

｢それに、学ぶことだけが目的じゃないわ。あなたの行動に、この国の先行きがかかってるのよ｣
｢……｣

ずいぶんと物騒な事を言い出す。
しかし、アイサはそれも心得ているようで、真剣にうなずいた。