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tn「ここですね…すみません、ボールペンお借りしてもいいですか？」
自分の持っていたペンを差し出すと、彼は丁寧に「トントン」と名前を書いた。
tn「はい、ありがとうございます」
男の握った部分は、生ぬるい熱を帯びていた。気持ち悪くて、そのペンを放り投げるように鞄へしまう。
tn「送りますよ、玄関まで」
「いえ、」
「いいんだって、Aさん。トントン先生に送られてよー」
ニヤニヤと女子生徒たちは笑う。
「トントン先生、Aさんのことめっちゃ綺麗やんな！ってずっと言ってたんですよー？」
気持ち悪い。
ただその一言をこの場で吐き出せたらいいのに。
tn「ほんまやめろって…シャレにならんわー」
照れたようにこちらを見るその目も気持ち悪い。憎悪しかない。
「大丈夫です。もう帰るだけなので」
預かったトロンボーンを持とうとすると、私が触れるより先に大きな手が近づいた。
tn「まあ、でも楽器重いですからね。それに、僕も職員室に帰るだけなんで、ほんまそこまで送りますよ」
女子生徒たちは「あ、私たちも早く帰らなきゃ」と言って手を振って帰っていく。
tn「ほんますみません、あの頃の子たちってほら…こういう話題にすぐ飛びつくじゃないですか」
ちらと合う目が本当に不快だ。校舎の外を見る振りをして、彼の様子を窺うことにした。
tn「そういえば、明日も来てくださるんですよね？実は、スコアの管理を僕がしてまして」
スコアとは楽譜のこと。この学校は定期的に演奏会を開いており、この時期になるとスコアをいくつか購入していく。
tn「そのことで相談したいこともありまして…明日来てくださったタイミングでいいので、少しお時間いいですか？」
「あ、はい…大丈夫です」
バイトのエーミールに来させよう。スコアの御用聞きなんて、バイトでもできる。グルッペンにはどやされそうだが、適当に理由を付ければ納得するだろう。
tn「じゃあ、こちら楽器。宜しくお願いします」
トロンボーンを受け取り、スリッパを戻して靴を履いた。
「それじゃあ、こちらで失礼します」
軽くどこではない高速会釈をして、回れ右をする。
tn「先生、また明日」
体が硬くなり、その場から動けなくなった。ああ、なんだ時間が止まったんだと思ったが、実はそうではない。ぷらぷらと揺れるトロンボーンの入ったケースの重みだけが、時間の流れをしっかりと伝えてくれる。
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Alex(プロフ) - ひすいさん» 感想本当にありがとうございます！すごく嬉しいです…！実習の時に何があったのかとか、tnのパスみなどが出てくると思いますので…少々お待ちくださいませ！ (2022年9月24日 22時) (
レス) id: 130555b457 (このIDを非表示/違反報告)
ひすい(プロフ) - 今回の作品も学校、部活動から得られる青春の感じも勿論あるのですがその中に不気味で真っ暗な穴の底を覗こうとしているような気持ちが湧き上がってきて、教育実習の時に2人の間になにがあって事件に繋がったんだろう、など色々考えてしまって今から続きが楽しみです (2022年9月24日 2時) (レス) id: 85256ab897 (このIDを非表示/違反報告)
ひすい(プロフ) - 新作、今気づいて拝読させて頂いたんですがとてもゾッとしました。Alexさんの作品で初めて読んだのは「魔女集会で会えたら」シリーズだったのですが、その時からAlexさんの書かれる空気感がすごく大好きで魔女集会シリーズはよく見返しています。 (2022年9月24日 2時) (レス) @page1 id: 85256ab897 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Alex
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/xxdreamxxalex02/
作成日時：2022年2月13日 21時
