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「こんにちは、リペアに来ました」
音楽室の扉を開くと、全体練習の真っ最中だった。生徒たちは部長の号令で立ち上がり、「こんにちは！」と元気に挨拶をする。軽く会釈をし、その後指揮台に立つ顧問の先生にも会釈をした。顧問の先生は「もう少しで休憩に入るので、少しお待ちください」と言って再び指揮棒を振る。
ああ、いいな。
部屋の空気が音で震える。キラキラと光るような音、硬くで真面目そうな音、ケラケラと笑うような音や、か細いけれど芯のある音。こういう楽しさを伝えたくて、私は音楽教師を目指していた。目を閉じて合奏に集中しようとするが、瞼の裏に焼き付くのはあいつの顔だった。
「っ、」
慌てて目を開けると、ちょうど合奏が終わった。
「Aさん、ここ見てほしくて…」
いの一番にやってきたのはクラリネットの子だった。そう言って見せてきた部位はキーの部分。ここは繊細で、かつ壊れやすい部位でもある。
「あー…ちゃんとオイルやってないでしょ？ここはすぐ動かなくなるから気を付けてね？」
リペアセットを鞄から取り出し、オイルを差して動きを確かめる。
「はい、とりあえずこれで様子見てみてね」
「ありがとうございます！Aさん本当に大好きー」
「はいはい、ありがとう。じゃあ、次の方」
医者が診察をするように次の人を呼ぶと、次は金管楽器。分解して直して、必要とあらば店に持ち帰る。そうなると代替器が必要となるので、貸出料金を徴収することになる。そういった書類のやり取りをしていると、だいたい部活の時間が終わる頃になる。
「じゃあ、代わりの楽器を明日持ってきますね。書類は、」
「トントン先生が書いてくれると思います。今なら職員室にいるんじゃないかな？」
副顧問が何人かいるはず。
「…他の先生は？トントン先生は来たばかりだから、書類のこと分からないと思うし」
tn「トントン先生はここにおるでー？」
背中にムカデが這ったような感覚。規則的な百の脚が背中を這い上り、首を通ってつむじのあたりで止まった。
「あ、トントン先生。これ、楽器借りることになったの」
tn「そうなん？この書類に何か書けばいいんですか？」
生徒たちはやいのやいのと男にちょっかいをかけ、「早く書いてよー」といじられている。
「…ここにサインをください。明日には楽器を持ってきますので」
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Alex(プロフ) - ひすいさん» 感想本当にありがとうございます！すごく嬉しいです…！実習の時に何があったのかとか、tnのパスみなどが出てくると思いますので…少々お待ちくださいませ！ (2022年9月24日 22時) (
レス) id: 130555b457 (このIDを非表示/違反報告)
ひすい(プロフ) - 今回の作品も学校、部活動から得られる青春の感じも勿論あるのですがその中に不気味で真っ暗な穴の底を覗こうとしているような気持ちが湧き上がってきて、教育実習の時に2人の間になにがあって事件に繋がったんだろう、など色々考えてしまって今から続きが楽しみです (2022年9月24日 2時) (レス) id: 85256ab897 (このIDを非表示/違反報告)
ひすい(プロフ) - 新作、今気づいて拝読させて頂いたんですがとてもゾッとしました。Alexさんの作品で初めて読んだのは「魔女集会で会えたら」シリーズだったのですが、その時からAlexさんの書かれる空気感がすごく大好きで魔女集会シリーズはよく見返しています。 (2022年9月24日 2時) (レス) @page1 id: 85256ab897 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Alex
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/xxdreamxxalex02/
作成日時：2022年2月13日 21時
