■乙女でごめんくちゃい■□食堂すばる□

日替わり定食■Last order ページ50

「似合うやろ！！」

「七五三みたい」

「気にしとう事サクっと言いよるな、お前」

「千歳飴いる？」

「ほんまシバくぞ」

「やめて」


すばるくんとこの戸を開けて初めてすばるくんに出逢ってから、そんなに時間は経って無い筈なのに。

何年も前から私はあなたを知ってる気がする。

ずっとずっと昔から、こんな遣り取りをしてきた気がする。


重厚な木のドアの向こうからサワサワ聴こえる話し声。

そのドアの前に立つ私と。

すばるくん。


「オナカ空いた」

「お前頼むさかい高砂でガツガツ食うなよ、見た目だけはバケてんねんから。ハラ飛び出すぞ」

「何かと今日もスパイシー」


あなたが一番似合うと言ったドレスを着て。

あなたが「こないなもんは勢いやさかい、バーンいっとけ！！」って選ばせてくれた指輪を付けて。

あなたが「これだけは俺に選ばせてくれや！！」って周りの人が苦笑いするぐらい真剣に作ってくれた生花のブーケを持って。


「A」

「ん？」

「祭りやな！」

「間違ってる、すばるくん」



私は今日、あなたの花嫁になる。



「まだ泣いとんやろか」

「・・・考えたく無い」

「めっちゃ怒っとったなぁ、殴ったろか思うたわ(笑)」

「まさかお式であんなに号泣して怒鳴るなんて誰も予想だにしてなかったわよ」

「でもお前の事めっちゃ好きやねんなぁ、さすがシスコンや。いつか言うたんねん」

「なんて？」

「兄ちゃんの大事な妹、すんまへんなぁ！俺のもんなんすわ！！ケケケケケケ！！」

「て、言いたい」

「ほんとにやめてあげて。傷口に塩を塗り込むのはやめてあげて」


お式の時にお兄ちゃんが物凄く号泣しちゃって、嗚咽で私には何を言ってるのか解らなかったんだけど。

後からすばるくんに聞いたら、「お前、妹大事にせえよ！！泣かしたら承知せんぞ！！解ったか！！」ってめっちゃ怒りよんねんって、すばるくんだけ理解出来たみたい。

「泣かすか、アホ」ってすばるくんが言ったら、そのまま泣き崩れたお兄ちゃん。

何で自分よか大事なもん泣かさなあかんねん、アホやでコイツって隣にいた私に言うところがすばるくんらしい。


うるさいけどコトバ足らずで。

イジワルだけど優しくて。

そんなあなたとこれからを生きていく。

ずっと一緒に、生きていく。


「よっしゃ！行くで！！」

「うん」

「泣くなよ、ブサイクなるから」

「うるさい！！」


あなたで良かったと。

今、ココロから感謝する。


■ご馳走様でした■

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