■乙女でごめんくちゃい■□食堂すばる□

日替わり定食■36 ページ36

「お帰り」

「ただいま」


「今日のお弁当・・・」

「ちゃんと冷蔵庫入れとったか？」

「私生まれて初めて冷やし中華のお弁当見た」

「めっちゃ素麺と悩んだけど冷やし中華にしてん」

「職場の人たち皆ビックリしてた」


コンビニとか出前とかで食べるのとはワケが違って、お弁当に冷やし中華。

それも悩んだ相手がお素麺。

・・・ボーダーレス過ぎる。

斬新過ぎるお弁当。


「お前最近暑いせいか知らんけど食欲落ちとうやろ」

「バレてる」

「アホか。どんだけお前見とう思うてんねん」

「すばるくん・・・」


・・・そっか。

だってもうずっと私のごはん作ってくれてるし。

ずっと目の前で、その作ってくれたごはん食べてる。

こんなに同じ人の前で食事するなんて家族以外じゃすばるくんが初めて。

何も考えて無い、何か考えたら斜め上の残念ワールドに突入するだけの人、って今の今までそう思ってたんだけど。


ちゃんと。

見ててくれてるんだ。


「気持ちは解らんでも無い」

「何が？」

「この暑さのせいにして俺のメシ食わんようにしようとしとんも、解らんでも無い」

「俺は絶対太るメシなんか作れへんのに依然として結果が出ぇへんその自分のカラダにイライラするんも解らん事も無い」

「せやけどな、その代謝の悪い自分のカラダがあかんねんやん？」

「でもな？A？メシは食わなあかんぞ？なんぼデブでも食うもんは食わなあかん」

「心配してんねんで？」

「・・・・・・」


何。

何なの、その優しさの中に遠慮無くブチ込まれたシツレイ極まりない言葉の羅列。

何なの、その笑顔の中の気の毒そうな可哀想な子フラグの目は。


「・・・ジム、通う」

「ジム通う！！プログラム組んでもらう！！泳ぐ！走る！！ムキムキになる！！！」

「お前泳がれへんやん」

「・・・歩く」

「プールの中歩くもん！永遠に歩くもん！！海坊主みたいに歩くもん！！！」

「疲れ果ててドザエモンみたいに浮かんでやるんだから！！」

「止めとき」

「見てなさいよ、痩せて締まってやるんだから！！」

「止めときて」

「腹筋割ってやるんだから！！！！！」


その時すばるくんがアホや、って言いながら私をふわっと抱き締める。

ギョっとしたんだけど、すばるくんは私を抱き締めながら「これでええやん」ってちっちゃな声で言ってた。


「硬いオンナ嫌やん」

「フカフカしとう方がキモチええやん」

「だらしないままでおり」

「・・・だらし、ないんだ。やっぱり」

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