■乙女でごめんくちゃい■□食堂すばる□

日替わり定食■35 ページ35

「お帰り」

「ただいま」


「A」

「なあに？あーもう何なのこの暑さ」

「お前、ええニオイする」

「いいニオイ？あ、駅前のウナギ屋さんすっごくいいニオイしてたから移ったのかな？」

「そんなエ ロいニオイするウナギがこの世のどこにあんねん」


エ ロい、で全てを理解した私は冷たいオシボリで首の後ろを冷やしながら、カウンターの上にバッグから出した小さなガラスの小瓶をコトンと置く。

最近友達が調香師もどきみたいになってて、レッスンで作った香水を持ってきては私に振り掛けてフンフン匂ってる。

友達曰わく、私はどうも人より体温が高いみたいでラストノートまでの香りが解りやすいって理由みたいなんだけど。


「へー、お前の友達こんなん出来んの？凄いな」

「元々香水とか好きな子だったんだけどねー？ずっと使ってたのが廃盤なったとかで自分で作るようになったみたい」


不思議そうに小瓶を眺めてたすばるくんが、突然首もとに近付いてすっごくフンフン匂ってる。

てか、暑い。


「なんやこれ、めっちゃええニオイやな」

「オマケにエ ロい」

「そうかなあ？柔らかくて優しいニオイじゃない？」


小瓶のフタを開けてフンフン。

首もとをフンフン。


「気に入ったんならあげるけど・・・」


すばるくんならレディースつけてても違和感無いような気がするし、それよりも暑い。


「いやちゃうねんなー？何なんやろ？」

「何がよ」

「この瓶の中入っとうのとお前のニオイちゃうねん」

「A汁でも混ざっとんやろか」

「一体私は何を出してるのよ」


てか、色んな意味で色々問いたい。

汁って。何。

ま、ええわってすばるくんはカウンターの上の小瓶を持ち上げて、キュっとフタをしてエプロンのポケットにそのまま滑り込ませる。


「気に入ったの？」

「どうでもええ」

「・・・なら返してよ」

「あかん」

「ちょっと、それ私結構気に入ってるんだけど」

「ここ帰って来てから付けたらええやん、そない気に入ってんねんやったら」

「ごはん食べて帰ってねるだけなのに何故わざわざ」

「多分な、コレお前が付けとうからええニオイなんねん」

「俺がニオイたいから帰って来て付け」

「心の底からお断りします」

「何でじゃ！」

「だって暑いもん！すばるくんがずっと近付くから暑いもん！」


ワガママ言うとんなよ！ほんなら涼しなったらじゃ！って怒ってるけど。

一度誰がワガママなのかとことん話合わなきゃいけないと、思うのよね。

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