■乙女でごめんくちゃい■□食堂すばる□

日替わり定食■34 ページ34

「つか、A！！！」

「何よ」


きみくんのほっぺを引っ張ってるすばるくんの手を叩きながら返事をする。

大人のすばるくんがどうしてこんなに小さなきみくんと同レベルでケンカしてるの。

普段から大人気無い人だとは思ってたけど、まさかここまでだなんて。


「お前まさかの未婚の母やったん！？」

「また斜め上に向かってる・・・」

「女手一つで育てとったん！？色んな苦労もあったやんやろ？せやけどお前・・・いっつもあんな明るう笑うて・・・何て健気な子や・・・」

「A、こいつなにいうとん？」

「・・・今ね、自分の世界に入っちゃったから。もう少ししたら帰って来ると思うよ？オナカ大丈夫？」

「だいじょぶやけど、ほんまあほやな」


カウンターの上に置いてあったティッシュを掴んで、ブブーってハナミズをかみながら。

キラッキラの目ですばるくんは私ときみくんを一緒に丸ごと抱き締めて。


「3人で幸せになろな！今日から俺がお前ら守ったるさかい！！」


全く理解どころか言葉の意味すら解らない事を、涙ながらに叫んでる訳で。

もうお父ちゃんがおらんとかでいじめられへんからな！いじめられたらお父ちゃんがすぐお前を助けに行くさかいな！！って、知らない内にきみくんのお父さんにまでなってる訳で。


「おい、しゅばる」

「すばる言うな！お父ちゃん呼びなさい！！」

「おれのおとうちゃん、ちゃんとおるし」

「おんの！？」


今度はガバっと離れて、私の両肩を掴んでグラングラン揺らしながら。

お前いつの間に結婚したんや！誰の許しを得て結婚しとんや！！今すぐ離婚して来い、このドアホ！！って本当に泣きたくなるような事を叫んでる訳で。


「すばるくん」

「何やこの裏切りもんが！！」

「一体私がすばるくんに対して何を裏切ったのかは後から聞くとして」

「あなたの突き抜けた妄想に付き合う前に、きみくんオナカ空かせてるの」

「・・・本気で怒る前に何か食べさせてあげて」


ゴクっとすばるくんの喉仏が揺れるのを多分私は無表情で見てる、と思う。


「きみくん、おいし？」

「めっちゃおいしいで♪」

「きみたか、ウマイか？」

「わるない」

「何やねんお前は！！」

「やめぇや！しゅばる！！」


友達の急な残業が終わるまであと1時間はこんな状態なのかしら。

溜息をつきながら目の前のオムライスをぱくんと食べる。


「A、ウマイか？」

「・・・おいしい、よ・・・」


とにかく、すっごく疲れた気がする。

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