■乙女でごめんくちゃい■□食堂すばる□

日替わり定食■28 ページ28

「お帰り」

「ただいま」


「お前ボーナスとか出ぇへんの？」

「うーん、どうだろ？出ても寸志程度じゃない？不景気だもん」

「出たら言いよ」

「目的は何」


ウチの親ですら知らない情報をどうしてすばるくんに報告しなきゃいけないのかサッパリ意味が解らないんだけど。

まぁ意味が解らないのは今に始まった事じゃないし、ギャフンって言わされる事も今に始まった事じゃないから少々じゃ驚かなくなってる自分をとても褒めてあげたいってココロの底から思うワケで。


「9月まで金ちゃんと残しときよ、って注意喚起やんけ」

「一体9月に何があるっていうの。私の予定の中じゃ9月はただの9月なんだけど」

「一大イベントがあるやろ！自分何忘れとん！？お前にとって何より大事な記念日ちゃうんけ！！」

「記念日？？？」


9月に一体何の記念日が到来するっていうのかしら。

私にとってとっても大事な記念日？


「え、何？解んない」

「ほんまに解れへんのん！？」

「うん」

「自分なぁ！大概せえよ！！ほんまオトコやったら殴られても文句言われへんぞ！！」

「・・・ちょ、待って？考える」


しっかりせえや！！っていつもと違って何だかほんとに怒ってるみたいに見えたから、一生懸命思い出そうとするんだけど。

9月っていったら幼馴染のエミちゃんのお誕生日・・・ぐらいしか私の中じゃ無いんだけど。


「・・・すみません、解りません」

「お前、マジで言うとん？」

「・・・ごめん」


怒ってたすばるくんの目が、急に哀しそうになっちゃって。

その目を見つめながらもう一回ぐるぐる考えるんだけど、どこをどう考えても私にとって一番大事な記念日っていうのに辿り着けなくて。


「・・・すばるくん？」

「あの・・・ごめんね？知ってるなら・・・教えて？」


はあ、っておっきな溜息をついてぱさっと前髪をかき上げたすばるくんの顔が、何だか妙にキレイでちょっとだけドキンとする。

勘弁してくれや、って言いながらまだ哀しそうな目を少しだけ伏せたすばるくんに。

ドキドキ、する。


「すばるくん、あの・・・」

「ほんまちゃんと覚えとかなあかんで？」

「・・・うん」

「俺の誕生日やん」

「・・・・・・」

「ハ？」

「俺の！誕生日！22日！！！」

「・・・ハ？」


ドキドキしてた胸の音は、スーっと血の気が引く音に変わっていって。

クネクネして自分の誕生日を語ってる目の前のすばるくんに、今から何て言って怒鳴り散らそうって考えてるワケで。

日替わり定食■29→←日替わり定食■27

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す