■乙女でごめんくちゃい■□食堂すばる□

日替わり定食■27 ページ27

「お帰り」

「ただいま」


「ちょっとこっち来ぃ」

「また何故」


カバンの中からお弁当箱を取り出して、取り敢えず言われた通りにカウンターの中に入り込む。

弁当箱そこ置いとき、って言われて振り返ったらやたらと大きな銀色のボウルをむぎゅ、と押し付けられる。


「ダマ無くなるまでしっかり混ぜなあかんで」

「これは一体何事」

「今日はたこ焼きするで」

「まさかのお店でタコパ」

「タコパちゃう！！大体何やねん最近は家でたこ焼きやるっちゅーたらタコパて！アホか！！」

「タコパっていうじゃない」

「関西じゃそんなん言えへん。大体毎週毎週パーティーやっとれるか」

「毎週？」

「関西人は普通に毎週みたいにたこ焼きすんで」

「ネタかと思ってた」


ネタて何やねん！って怒りながらタコ切ってるすばるくん。

じゃああの一家に一台たこ焼き器があるっていうのもあながち伝説じゃないのかも。

聞いたら怒られそうだから黙っとくけど。


「ほな生地流し込み」

「この穴のとこに入れたらいいの？」

「おん、そうそう」


おたまで掬って零さないように気を付けながら一つ一つの穴に流し込むんだけど。

・・・なかなかどうして、難しい。


「お前何でそんなんチミチミ入れんねん」

「え？零さないように・・・」

「アホか！！そんなん後から中に入れ込むねんからジャバジャバでええねんて！」

「そうなの？」

「ほんま。騙された思うてやってみ。俺がお前騙した事無いやろ」

「・・・かなり怪しい事は多いけど」

「何て！？」

「ｲｴﾍﾞﾂﾆ」


流し込んだ生地の上からタコやら天かすやら色んな具を入れていってたら、もうあの穴のフチなんて水没しちゃって全く見えないんだけど。


「ほれ、これ持ち」


長い竹串を渡されてお前にたこ焼きを極めさせたるさかい！！ってすっごくキラキラした目で言ってるけど、別に私はそんなにたこ焼きに対して愛情は生憎持ち合わせてなかったりする、んだけど。


「こないしてな・・・こないしてー・・・ほれ！」

「すごい！すばるくん上手！」

「Aそっちやってみ？」

「こうしてー・・・こう！・・・あら？」

「お前どんだけ不器用やねん」


それでもヘタクソながら初めて作ったたこ焼きは楽しくて。

すばるくんがフウフウしてパクンって口の中に入れてくれたたこ焼きもすっごく美味しくて。


「美味しい！」

「俺にもあーんして」

「ハア？何で？」

「あーんして貰いたいからに決まっとうやろ、アホ」

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