■乙女でごめんくちゃい■□食堂すばる□

日替わり定食■22 ページ22

「お帰り」

「ただいま」


「A」

「なあに？」


仕事の帰りにショップで買った荷物を隣の椅子の上に置いて、麦茶をごぶごぶ一気に飲み干す。

冷たい麦茶がスーっとカラダに染み込んで、やっとフウって一息つける。


「すばるくん、麦茶のお代わりもらってもいい？」

「おん、そこ入っとうから勝手に飲め」


ビールが並べられてる小さな冷蔵庫のドアを開けて、麦茶ポットを取り出して。

すばるくんも飲む？って聞いたら飲むって言うから冷えたグラスにコポコポ注ぐ。


「はい、このグラス使ってよかった？」

「ええよ」

「あ、これお弁当箱。今日もありがとう」

「A」

「なあに？」

「・・・あんな？」


珍しくなんだかおとなしいすばるくんだなって気付いたのは帰って来て暫くしてから。

いつも言われる人を人とも思わない暴言もそういえば今日はまだだな、って。


「すばるくん？」

「・・・・・・」


コトンってグラスを置いたすばるくんがゆっくりカウンターを廻って私の隣に黙って立つ。

じっと見つめられて、でも何にも喋らなくて。

すばるくんのおっきな目の中にフシギそうな顔をした私が映ってる。

その時すばるくんのクチビルがゆっくり動いて。

そして。


「A」

「な・・・に？」

「メシ、炊くん忘れた」

「・・・・・・は？」

「お前のメシ、炊いてへんねん」

「何故」

「スイッチ入れるん忘れとった」

「・・・ダメじゃん・・・」


すまん！！大飯食らいのお前なのに！！白飯で白飯食えるぐらいメシ好きやのに！！ほんますまん！！

いつも通りのすばるくんに戻っていつも通り何気にシツレイな事を言い放たれる。


「無いものは仕方無いわよ(笑)じゃあ今日は帰るね？」

「あ、そうだ。これ」


買い物した紙袋の一つをすばるくんに渡して。

いつもおいしいごはんありがと、大したモノじゃないんだけど、って。

ぽかんとしてるすばるくんにすぐにバイバイって手を振って荷物を掴んだのは、ガラでも無かったかなってちょっと恥ずかしかったから。

カラカラって入口を開けて外に出ようとした時に。


「A」

「ん？」

「・・・おおきに」

「うん(笑)」


じゃ、ってまた出ようとした時。


「メシ、行こか」

「今から？」

「おん、何食いたい？」

「白ごはん」

「どんだけ白飯好きやねん、お前は」

「すっごく大好き！！！」

「知っとうけどな(笑)」


そう言って何故か笑顔でクシャクシャアタマを撫でられてる、私。

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