■乙女でごめんくちゃい■□食堂すばる□

日替わり定食■1 ページ1

「お帰り」

「・・・ただいま」


「何やそのシケた顔」

「・・・疲れてんの」

「益々ブサイクやで」

「益々、の意味が解らない」


ほんとこの人って口悪い。

人の顔見たら「今日は少しマシなブサイクやな」とか「顔、エライ事なってんで」とか、女子に対して何て事言うのよって事ばっかり。

こんなに疲れてんだから、少しぐらい労いの言葉とかあってもいいと思うワケよ。

毎日なんてそんなムチャな事を望んでるワケじゃないんだから。

こんな時ぐらい労ってくれてもバチは当たらないと思うワケよ。


「お疲れちゃーん」


コトンと目の前に置かれる大きな丼。

お茶漬け・・・じゃないんだけど。


「今日は何？」

「冷や汁」

「・・・何それ？」

「宮崎の郷土料理やん！自分そんなんも知らんのん？」

「聞いた事はあるけど初めて食べるかも」

「栄養価は高いしやな、食べやすいしやな、メシも食いたないぐらい疲れた時はええで」

「ま、Aがメシ食われへん時は死ぬ時やろうけどな！」

「・・・多分ね」


大きな口を開けてアハハ！って笑ってるこの人って、本当に私が客だと思ってるのかしら。

サラ、と口の中に入れた時にふんわり広がるミョウガの爽やかな風味。

お出汁とお味噌とゴマもこのほぐしたお魚の味を邪魔する事なくすっごくいいバランス。

段々湿気が多くなってきてるこの季節に、サラリと美味しく頂ける。


「おいし」

「ウマイやろ？」

「うん、何かザックリしてそうなのにすっごく繊細な味」

「何でそんなん面倒臭い事言うん？ウマイでええやん」

「いつも深い感想言わなきゃ怒るのすばるくんでしょ」

「いや、普段はそうやねんけどな」


カウンターに肘をついて、ニヤニヤ笑いながらいつもみたいに見てるんだけど。

ヒトがメシ食うのん見るのめっちゃ好きやねーん♪とか言って、ずーっと食べてる間中じーっと見られてるのって、いつまで経っても慣れないんだけど。


「A、ほんま疲れてそうやからな？たまにはウマイだけでもええかなて思うて」

「そん代わり明日はめっちゃ言えよ、海原雄山並みに」

「・・・まさかの美味しんぼ！！」


あの息子のマユゲどないやねん、って言ってるすばるくんなんだけど。


「メシ食ったら少しはマシになったやん」

「何が？」

「来た時よか、かわいなってるで？」

「なーんてな！ウソやけど！」

「・・・ムチャクチャ今すぐにその顔を殴りたい」

「顔はやめたげて！」

「人の顔はムチャ言う癖に！」

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