何も出来ない白色ヒーロー【まふまふ】 (ページ19)

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17話ページ19

Aside

夢を、見た。

名前も思い出せない君が私の名前を呼んでいる。

待って、待って...！何かを伝えたかったの。君の名前も、伝えたいことも思い出せないけど、伝えたいの。

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君の口が動いて伝えてくれたもの

それは、私のヒーローの名前。

ああ、思い出した。思い出せたよ。君の名前も、何を伝えたかったかも。

思い出した瞬間、水が身体中に入ってきた感覚が蘇った。

冷たい。苦しい。息が出来ない。

...やっと、思い出せたんだけどな。

大好きだったよ。

そこで私の記憶は途切れて暗くて深い所へと落ちていくだけだった。

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まふまふside

Aが飛び降りた。ああ、ああ、ちょっと待って。

助けなきゃ。

でもどうやって？１人じゃ無理だ。

助けを呼ぶ？時間がない。大声なんて出したところで皆見てみぬフリだろう。

そんなの僕が一番わかってる。学生時代のイジメと同じだから。

(こんなこと考えてる場合じゃない！)

Aを助けられるのは僕だけなんだ。

ずっとずっと君のヒーローになりたかった。

気付くと水の中にいてAを探していた。

いた、と思うと同時に引きこもりの細くて頼りない腕を懸命に動かして手を伸ばす。

A、やっと、見つけた...！これで浮かべばい、け...る？あれ？

駄目だよ、助けてない！まだ、もう少しだけ。

ごぼごぼと自分の酸素が水に溶ける。曲のワンシーンを見ているみたいに体から力が抜けていく。

...ごめんね、ヒーローになりたかったよ、A。

愛する人も守れないなんてね。