第58話 ページ8
何がもうすぐなんだ！？と言いたげだったが、スネイプは我慢した。
4日目になり、飲食を一切断っているためそろそろ命の危機に近づいていた。
虚ろな目をしたキノは、酷く憔悴していた。
このままでは餓死してしまう。
ーー……ローズ……あなたの苦しみを感じたくて……私も同じ運命を辿るから……。
察知したのか、ルルがまた現れてキノの様子を伺った。
「ご……ご主人様……お願いでございます……せめてお水だけでも……！」
キノは弱々しく首を振った。
「このままでは死んでしまいます！ご主人様！！」
『……死なせて……お願い』
「ダメです！ご主人様がお亡くなりになったら、魔法界はどうなるのですか！？ご主人様が設立した学校の生徒達は、一瞬で路頭に迷われてしまうことになるのでございますよ！！？」
『……もういいよ……もう……私はもう……死にたいの……』
「っーー！」
『ごめ……んね……ルル……』
「！ご主人様ぁ！？」
キノの瞼がゆっくりと閉ざされた。
その時だった。
キノの両手にあった赫い石が強烈に光った。
「！」
スネイプは手でガードしながら、薄め目で見つめた。
赫い石の光がキノの全身を覆っていくと、パッ！と消えてしまった。
「！？消えたぞ！」
「――地下ですよ。この屋敷の地下に移動したようですね――」
「何故だ！？」
「――封印したのですよ。赫い石がーー継承者の命を優先したわけです――」
「では……キノはこの日から約千年も封印されたというわけか？」
「――そうですね――」
ブラベウスはさらりと言った。
「――さて、これで彼女の過去がわかりました。では、元に戻りましょうか――」
そう言うと、ブラベウスは指をバチン！と弾いた。
パッ！と一瞬でスネイプの自室に戻った。
何だか長い夢を見ていたかのような不思議な感覚がスネイプを襲う。
「……」
「――皮肉な話ですね。死にたがっていたのに、彼女が継承者であるが故に死ぬことすら許されない。最後のウランバルトの人間として、彼女の命は赫い石に握られてしまっている。でも今は、ユルが彼女の身体を乗っ取ってしまった……セブルス・スネイプ、あなたならどうしますか？――」
「……どうする……だと？」
「――彼女があなたに心を許して赫い石とともにお願いしたことです――」
「何故お前がそれを知ってーー」
「――私は天使ですからね。彼女の願いは死です。できますか？――」
「………」
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年6月6日 12時
