第53話 ページ3
床に蹲っていたルイがゲホッ！とまた吐血した。
命の終わりが近づいている。
「キノ……た、頼む……わ、私を……助け……」
『私から大事なものを奪った罪は重い。貴様の大事なものを処分してやる』
「！？なにーーをーー」
スッーーキノは右手を突き出した。
二つに分かれた胴体の真下に、魔法陣が出現する。
ルイの表情が恐怖に染まった。
「キノ！だのむ！殺さないでくれっ！！」
『……』
同一人物とは思えないぐらいに、あのルイが懇願し始めた。
「私はーー父親じゃないか！血の繋がった……家族ーー」
『失せろ』
「！やめーーキノォオオ！！」
絶叫とともに、ルイは魔法陣とともに消えた。
血溜まりも消えてしまっている。
ルイが居た形跡が全く残ってないなかった。
「……な……何を……したのだ……？」
スネイプは声を震わせた。
何もかもが一瞬過ぎて、頭の処理が追いつかなかった。
「――消却魔法ですよ。魂ごとこの世から消し去る恐ろしい魔法……あなた方の世界では存在しない魔法です――」
ブラベウスは淡々と説明した。
「！？存在しない魔法だと？」
「――この魔法があまりにも恐ろしいからですよ。使用できるのはウランバルトの人間だけです。さっき見たでしょう――」
「しょ……消去魔法とは違うのか……？」
スネイプは戸惑ったまま聞いた。
「――消去魔法は単純に消すだけで、戻したい時は戻せるようになっていますが……消却は対象となったものを消し去ることができ、二度と戻すことができない魔法です――」
「……」
スネイプは顔を強張らせ、キノに目線を戻した。
キノはフードを被り、足元に魔法陣を出して消えた。
「！何処に！？」
「――………――」
すぐに景色が変わり、キノは白い扉の前にいた。
「あ、あの部屋はーー」
スネイプはすぐにわかった。
キノの両手が、2つあるドアノブを掴むとゆっくりと引き開けた。
ギィィィと音を立てて、扉が開かれた部屋は、お茶会用の部屋だった。
そこには、ルイの妻が約20人弱おり、魔力を持った小さな子供が4人もいた。
かつての顔ぶれは居なくなっていた。
最初の妻で気の強いカトリーヌやマリアなどの知った女達がいない。
どうやら、一定の年を取ってしまった女は処分されてしまうようだ。
今この部屋にいる女達はどれも初めましてばかりだ。
妻達は扉を開けた者を訝るようにざわつき始めた。
フードを深く被っているせいで顔が見えない。
「……誰なの？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年6月6日 12時
