創造主の末裔 with キノの過去 (ページ6)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:672 hit

第6話ページ6

また目の前が変わった。

今度は寝室のある部屋だった。

ベッドの上で、十歳のキノが泣いている。

父親の姿はなく、屋敷しもべ妖精のルルがキノを慰めていた。

「お嬢様……お辛いものを見てしまわれたのでございますね……」

ヒック、ヒック、と涙を流すキノをルルが優しく頭を撫でていた。

『どうして……？同じ人間なのに……人間が人間を飼っているの？どうして、道端で餓死(うえじ)にしている人がいるの？？どうしてみんなお腹を空かせているの？？？』

「お嬢様……外の世界には、貧富の差があるのでございます」

『魔力を持たない人間の世界も同じだったわ！魔法界だけじゃないのよ！どうしてなの！？人間ってーー心が貧しい人ばかりなの！？同じ人間同士なのに、どうして助け合って生きていこうとしないの！！？』

「……お嬢様は……お優しいお心をお持ちのようで、ルルは嬉しゅうございます」

『ーーえ？』

ルルが少し複雑な顔をした。

「……ウランバルト一族の皆様は……ご当主様もそうですが……慈愛のお心をお持ちではございませんから……お嬢様が涙を流す理由が、ご当主様には理解できなかったのでございましょう」

『………お父様は……あれを見ても、可哀想とは思わなかったというの？』

キノの涙が止まった。

「ウランバルト一族の皆様は……冷淡で無慈悲で……ございますから……どちらかというと……お嬢様が異質といいますか……」

『……でも、初代創造主様は……魔力を持った人間達に同情して、魔法界を造ったってーー』

「同情……それもある種そうだったと思います」

ルルは曖昧な表現をした。

「ですが……創造主様も……創造主様の方が一番……」

『え？なあに？ルル？』

よく聞こえなかった。

ルルが首をブンブン振った。

「なんでもございません。お嬢様、今日見たことは……なるべくお忘れに。お嬢様のお心が差し支えてしまいます」

『でも……何とかならないの？可哀想な人達が沢山いたのよ！魔力があってもなくてもーー沢山の人が死んでーー』

「お嬢様……」

キノが初めて見た外の世界は余りに残酷だったようだ。

道端で息絶えている者達、孤児が身売りする姿、激しすぎる貧富の差、小さな町や村で起きる内乱、人々が殺し合う姿ーー

それら全てを見せられたキノにとってそれは強い思い出となり、トラウマにもなってしまった。

スネイプは、キノが外の世界で何を見てきたのかが見えていた。

感情、情景、全てが直に伝わる。