創造主の末裔 with キノの過去 (ページ50)

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第50話ページ50

考えてる暇なんてなかった。

すぐさま魔法陣で鎖を吹き飛ばすと、間髪入れずに扉を開けた。

屋根裏部屋の中は漆黒の闇そのものだった。

光りが一切入らない構造になっているせいで、何も見えない。

だが、扉を開け放ったことで光りが差し込んでいく。

そして、薄っすらと浮かびあがっていき、中の様子が少しずつわかる。

決して良い環境とは言えなかった。

隙間だらけのせいで、蜘蛛の巣がたくさん貼られている。

『ローズ！ローズ！！』

扉を開けたままにして、キノは飛び込んだ。

すぐに、気づいた。

それは、すぐ目の前に不自然な高さから人の足が垂れ下がっていたから。

瞬間、キノの心臓が大きくドクン！と鳴った。

生気のない真っ白な足は酷く痩せ細っていた。

上を見るのがこんなにも勇気がいるなんて思わなかったが、見ずにはいられなかった。

ゆっくりと足首から太腿へと目線を上へと這わせていく。

『！！？』

息がヒュッと止まった。

心臓も一瞬止まった気がした。

天井からぶら下がっていたのはーーローズだった。

14歳でこの家を去り、あれから40年余りの月日が経ったが、それでもキノにはすぐにわかった。

年老いても、わかる。

どんなに容姿が変わろうとも、キノは見間違えたりしない。

『ロ……ローズ……？な、何してるの……？？』

キノは見上げたまま、静かに言った。

瞬きを忘れ、ただただ、ローズの顔を見つめた。

あの頃の美貌はすっかり消え失せ、ローズの顔はげっそりと痩せこけ、頬骨がはっきりと浮かびあがっており、目の窪みまで出てしまっていた。

ローズは半目を開けたまま、ただ真下を見ている。

返事が返ってこないのは、ローズの首には太い縄が巻かれていたから。

それが目に入った瞬間、キノは理解した。

『いーーいやああああああ！！！ローズ！！！！！』

キノは魔法で縄を切った。

すぐさま両手を広げ、ローズを抱きとめた。

びっくりするくらいローズは軽かった。

この様子からして、まともな食事が与えられなかったのがわかる。

『ローズ！ローズ！！何でこんなーーローズ！目を覚まして！！！』

キノは首に巻き付いた縄を剥ぎ取り、ローズの頬を何度も何度も叩いた。

そしてもうひとつ気づいた。

別れの際に、ローズの首につけてあげた赫い石の首飾りが無くなっていることに。

ーー無い！？

『ローズ！お願い！！目を覚ましてぇ！！！』

痩せ細ったローズの身体を激しく揺さぶった。

何度も何度も、揺さぶった。