第38話 ページ38
相変わらず、屋敷の中は大所帯で賑やかだった。
ルイはローズを最後に、少女を攫ってくることをしなくなり、キノはそんな父親が何を考えているのかさっぱりわからなかった。
考えるのをやめたのは、これ以上、父親のことで胸を痛めたくなかったからだ。
だがそれ以上に、キノは大忙しだった。
妊娠していく娘達が増えていき、出産ラッシュも重なり、ルルとキノは引っ切り無しに動きまわった。
見兼ねたローズが手伝ってくれたりもあったが、その時ですら会話はなかった。
そして、生まれてきた赤児に魔力がないとわかると、ルイは躊躇することなく処分していった。
その遺体の処理はルルが担当になっていた。
キノに任せたら埋葬してしまうからだ。
出産で使用した道具などを片付けながら、キノはやるせない気持ちでいっぱいになりながら涙を拭った。
ローズはきゅっと唇を閉ざし、サッと片付けると部屋から出て行ってしまった。
声をかける暇さえなかった。
キノは涙を流して俯いた。
会話はなくとも、一緒にいれるならそれで充分だと、自分に言い聞かせた。
ブラベウスがまた時を進めた。
どれぐらい月日が経ったのかさっぱりわからなかったが、キノが小高い丘の上で花々に囲まれている中に体育座りで座り込んでいた。
美しい花達を見ても、キノの表情が綻ぶことはなかった。
無表情で生気のない暗い顔をしている。
そこに、ある人物がやって来た。
ローズだった。
ローズもまた、無表情だった。
キノは気づいていないのか、振り向こうともしない。
「………」
ストンーーと、ローズも座り込んだ。
真横に座り込んだローズに、キノはハッとして顔を向けた。
少し驚いている。
『………ロー………』
名前を呼びかけて、キノは口をつぐんだ。
気安く呼ぶな！と怒られると思ったのだろう。
ローズは視線を花達に向けている。
会話がないまま、時間だけが過ぎていく。
気まずい空気が一帯を包んでいた。
「……何で……あの女達にやり返さないの？」
突然、ローズが喋った。
『ーーえ？』
ローズから話しかけられ、びっくりしたキノはもう一度ローズを見た。
「〜っだから、なんであの女達にやり返さないのって聞いてんの！」
キノはポカーンとなったが、すぐに何を言ってるのか理解した。
『ああーーそ、それは……だって……』
歯痒い返答に、ローズはイラッとした。
「あんたさあ、魔法が使えるんだからぎゃふんと言わせたらいいじゃない！」
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
