第26話 ページ26
それから、キノとローズは湧き水の出る池のほとりで毎日落合い、あっという間に2人は友達になった。
たくさんお喋りをしたり、キノの知らない遊びをローズが教えたりしながら楽しい時間を過ごした。
楽しそうにはしゃぐ少女達を見て、スネイプの表情も少しだけ緩んだ。
ふと、ブラベウスが違う方向に目を光らせているのに気づいた。
「どうした？」
「――……あそこに、白い鳥がいるのが見えますか？――」
ブラベウスがスッと腕を上げ、見ている箇所を指差した。
指先が示す場所には、白い鳥がキノ達をじっと見つめていた。
「！あの鳥はーー」
「――……そうです。ウランバルトの遣い鳥です。監視しているんですよ――」
「監視ってーーまさか、父親か！？」
「――そうです――」
「……約束を守らないからか……？」
「――……少し、時を早めましょうか――」
ブラベウスはそう言うと、指をパチン！と鳴らした。
すると、グルッと情景が歪み、今度は部屋の中に変わった。
ウランバルトの屋敷の中だった。
「！人が……増えている！？」
この部屋は他の部屋とは少し造りが違っていた。
小ホール並みの広さがあり、陽射しが入り込みやすい構造で、その自然光によって部屋は明るく暖かく、まるで温室のような居心地の良い大部屋だった。
そこには、いつの間に増えたのか、キノと年の近い娘達が約30人近くおり、皆会話を嗜んで盛り上がっていた。
皆どれも美しく可愛らしい美少女ばかりで、身成から裕福家系だとわかる。
そして、そのうちの2割が妊娠していた。
大きくなったお腹を大事そうに撫でている。
「……」
ーー……血の掟を守れなかったということか……。
茶会を開いているようで、少女達の中心にはキノの父親ーールイがいた。
皆こぞってルイを独占しようと、夢中で話しかけている。
ルイは美しい笑みを浮かべて、そんな少女達の話に耳を傾けながら、時折相槌したりしていた。
ーーキノは何処だ？
スネイプは部屋を見渡すと、隅の方で隠れるようにして立っているキノを見つけた。
「ちょっと！」
ひとりの少女がキノを呼びつけた。
その声は、まるで給仕を呼ぶ言い方だった。
キノがすぐにその少女の元に行くと、少女が何やら指示を出している。
どうやら、床に水をこぼしてしまったようだ。
キノは無言で床に屈み込むと、布で拭き取り始めた。
少女が意地悪な笑みを浮かべた。
「ーー！」
ーーキノ！！
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
