第22話 ページ22
「お嬢様……大丈夫でございますか？」
心配したルルが、キノの赤く腫れてしまった頬を魔法で治した。
『大丈夫……ありがとう、ルル』
「カトリーヌ様はなんと気のお強いお方なのでございましょう。お嬢様を叩くなどーー」
ルルは少し怒っていた。
『ねえ、ルル。どうして……彼女はお父様にべったりなの？無理矢理連れてこられて……その……身体だって……』
「そ、それはーー」
ルルは言うべきかどうか迷った素振りを見せた。
『ルル、知ってることは話して』
「そ、それは、ご当主様がカトリーヌ様に魔法をかけているからでございます」
『やっぱり。そうだと思ったわ……』
「かけられた者は一瞬で恋に落ちてしまう、それはそれは強い魔法でございましてーー一目惚れ魔法でございます……」
『一目惚れ？？て、何それ？』
キノのポカン顔に、ルルはズルッとなった。
「え〜とですね……この魔法をかけられた者は、一瞬で愛してしまうということでございます。どんなに興味なくても、嫌いでも、かけられてしまった者は忽ちカトリーヌ様のように恋してしまい、ゾッコンになってしまわれるのでございます」
『でも所詮は魔法でしょう？』
ルルは首を横に振った。
「この魔法の恐ろしいところは、一度かけられた者は、死ぬまで解けないのでございます」
『えっ！じゃあ、彼女はーー』
「はい。カトリーヌ様は死ぬまでご当主様を愛し続けるのでございます」
『な、なんて恐ろしい魔法なの……』
キノは震え上がった。
それと同時に、あるひとつの疑問が浮かんだ。
『そんな魔法があるなんて知らなかった………どうして、お父様は私にその魔法をかけなかったの？』
「お嬢様にはかける必要がないと思われたのでございましょう」
『必要がない？どういうこと？？』
「お嬢様は……ご当主様を心から愛しておられましたから……」
『ーーそ、れはーーお父様が父親だからーー』
「それを、ご当主様はちゃんとわかっておりました。だから、かける必要はないと判断されたのでございます。ですが……あの日は後悔されておられました……」
『かけるべきだったと……？』
ルルは耳を垂らして小さく頷いた。
『私が……継承してしまったから？』
「……はい……」
『………！』
ギリッーーキノは唇を強く噛んだ。
そのせいで、口の中で血の味がした。
キノはスッと立ち上がり、窓を勢いよく開けた。
どんよりとした曇り空、雨が今にも降り出しそうだった。
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
