第21話 ページ21
眠れないまま朝を迎えてしまい、少し疲れた顔で食堂へと下りた。
『！』
入口で、キノは固まった。
昨日無理矢理連れてこられていた娘が、ルイにべったりくっついて食事をしていたのだ。
ーー……ど……どういうこと？
気品ある綺麗な娘だった。
楽しそうに笑い合う2人。
ルイは優しい温もりのある笑みを浮かべて少女の話に耳を傾けている。
『……』
固まっていると、ルイがこちらに気づいた。
「おはよう、キノ。カトリーヌ、この子が私の娘だよ」
カトリーヌと呼ばれた少女が、キノに顔を向けた。
気の強そうな目で、じろじろと舐め回すように足元から頭のてっぺんまでキノを眺め回す。
「……ふぅ〜ん、本当にあなたにそっくりですこと」
冷たい目と、棘のある言い方だった。
『……』
「でも、ルイ様の方がとっても魅力的ですわ！」
カトリーヌは頬を染め、真横にいるルイにうっとりする。
「カトリーヌと歳は同じだから、仲良くしてあげてくれるかい？」
ルイは優しくカトリーヌの耳に唇をつけて囁くと、カトリーヌの頬がほんのりピンクから真っ赤に変わった。
「ええ！勿論ですわ！！」
完全に、ルイに溺れているのがわかる。
「キノ、カトリーヌと仲良くするんだよ。彼女は貴族出身の娘だから、失礼なことはしてはいけないよ？」
『………』
固まるキノに、ルイはフッと口許を緩ませた。
「キノ、わかったね？」
『………わかりました』
落ち着いた食事はできないまま終わり、キノが部屋へ戻っていると、後ろからカトリーヌに呼び止められた。
『えと……何か……？』
カトリーヌはツンとした態度で、キノに近づく。
「あなた、本当にルイ様の娘なの？」
『え？ーーええ、まあ……』
「嘘、妹でしょ」
信じてないと言わんばりに、胡散臭い目で見てくる。
『妹じゃありません。本当に娘です』
その言葉に、カトリーヌの片眉が大きく吊り上がった。
「あたくしをバカにしてるの？」
『そんな、バカにしてなんかーー』
「どう見ても、年が近過ぎるのよ！娘なわけないじゃない！！」
『本当に娘です！顔がそっくりなのは、私が娘だからーー』
バチン!!
思いっ切りビンタされた。
生まれて初めて頬を叩かれたキノは、何が起きたか理解できなかった。
すぐに頬がジンジンと痛く、熱くなっていくのを感じ、叩かれたことによってそうなったんだと、妙に納得してしまった。
「あたくし、見え透いた嘘が大嫌いなの！以後、気をつけるのね」
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
