第17話 ページ17
父親がいた場所を、信じられない目で見つめる。
放心したまま、キノは周りに目を向けた。
机、椅子、書物、羽根ペンーー様々な物が散乱してまっており、酷い有様だった。
そして、例のーー父親がくれたのあの香炉が、粉々に割れて落ちているのが目についた。
香となる砂が床に細かく散っている。
胸に押し当てていたのを思い出したキノは、手をゆっくりと広げ、赫い石を見つめた。
『私が……強く願ったから……お父様は……消えたの……？』
問いかけてみたが、赫い石は反応しなくなっていた。
ただ、ほんのりと光を放っているだけ。
キノは父親の気配を感じ取った。
どうやら、自分の部屋にいるようだ。
『……ありがぅ……』
キノはもう一度、赫い石をギュッと握り締めた。
安堵した瞬間、堰を切ったように大粒の涙が溢れてきた。
一気に悲しみの感情がキノに降りかかる。
大好きだった父親。
いつも側にいてくれて、優しかった。
全ては、自分の子を産ませるためだけ。
そこに愛などなかった事実に、胸が張り裂けそうだった。
心の底から傷ついた。
胸が抉れるんじゃないかと思ったぐらいに、傷は物凄く深かった。
声を震わせ、キノは赫い石を抱き締めたまま泣いた。
ーーお父様にとって私は……どういう存在だったの！？
ーー娘なのに……！父と子の関係……ただそれだけなのに……！！
ーー……お父様は……生まれた時からこの私をずっと……あんな目で見てたの……！？
初めて見た、娘を女として見る父親の目。
その目を思い出すと、身体中が震えた。
『ーーっ！！』
声にならない声で、キノは泣き続けた。
「……」
間近で見ていたスネイプはギュッと拳を握り締めたまま、何とも言えない複雑な表情で、泣き続けるキノを眺めることしかできなかった。
側に行って慰めてやりたいと強く思った。
だがこれは、キノの過去。
わかっているが、胸糞悪過ぎて自分もどうにかなってしまいそうだった。
拳をわなわな震わせて見ていることしかできない自分に、物凄く腹が立った。
ーー………助けてやれないとは……
「――………――」
―――なるほど……生まれつき力は宿されていたのですね……―――
―――ですが……思いのままにできていませんね―――
ブラベウスは泣き続けるキノを見て、それからその手にある赫い石に移した。
―――エヴァ様が
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
