第15話 ページ15
目も開けられない強い光の中から風がルイ目がけて放たれた。
「！！？」
その風は、優しいものではなかった。
強風がルイを吹き飛ばす。
壁に激突する寸前で、ルイは魔法陣を繰り出し難を逃れた。
有り得ない猛烈な風が部屋の中で吹き荒れている。
ルイは両手で顔をガードして、この風を生み出している赤い光りに目を凝らした。
赤い発光色に守られる形で、いつの間に力を取り戻したのか、キノが起き上がっていた。
涙をボロボロ溢れさせて、シーツで身体を隠し、憎悪の籠もった目で、父親を睨みつけていた。
ルイは赤い光が何なのかわかっていた。
「………な………何故………赫い石が…………」
ルイは呆気にとられていた。
吹き荒れる風が、キノの部屋の中にあった様々な物を強い力で巻き上げ、破壊しながら渦巻いている。
香はこの風のお陰で効力が掻き消されていた。
先程まで浮いていた場所に香炉はなく、吹き荒れる風の中でぐるぐる部屋の中を回っているのを辛うじて見つけることができた。
キノは身体に巻いたシーツをギュッと握り締め、涙を流したまま父親を睨みつけていると、突然、知らない人の声が心の中で囁かれた。
―――“願いなさい。継承されし者よ”―――
ーーえ………？
その声は、とても不思議だった。
温かく、優しい、澄んだ綺麗な声。
―――“汝の望むままに願うのです”―――
ーー願い……？望むまま……？？
キノは赤い光りの中心にいる物を見つめた。
塊のような物体が見える。
ーー………？あれは………もしかして………。
創造主が書き残した書物に描かれていた物と同じだった。
ーーどーーどうして……ここに……？？
信じられなかった。
厳重に保管されているはずの物が、何故自分の目の前にあるのか、理解できなかった。
この屋敷の1番深い場所に保管されているーー赫い石。
継承者のみしか開くことができないとされているはずなのに。
キノは一度だけ、赫い石が保管されている扉の前まで行ったことがあった。
でもその時は、扉は開かなかった。
ーーなんで……？私が……助けを求めたから……？
キノは赫い石に触れようと、恐る恐る手を伸ばした。
「やめろ!!」
『！！』
「それを取れば、お前は継承したことになる！」
『………』
驚いて、思わず父親を見た。
初めて見る。
父親の余裕のない顔を。
「私がどれだけそれを欲していたか、お前は知っているはずだ！！」
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
