第28話 ページ28
「お嬢様……」
『こんな場所にもう居たくないっ！』
「お嬢様、ルルがご当主様にお話してーー」
『話したところで何も変わらないわ！』
キノはしゃくり上げて言った。
『彼女達は被害者なのよ！まずはお父様を何とかしないと、彼女達はあのままずっと囚われたままなのよ！！自由を奪われた鳥籠の中の鳥と同じよ！！！』
「ですが……すでに身重の方もいらっしゃいます」
『っ……！だから……何か方法を考えてーー』
どうやらキノは、ルイが連れてきた娘達を解放しようとしているようだ。
「一目惚れの魔法を解く方法は……以前もお話しましたように、一度かけられた者は死ぬまで解けません。頭の良いお嬢様ならどういうことかおわかりでございましょう？」
『……死ぬまでなんて……そんなの……可哀想よ……！』
「お嬢様……」
キノは涙をグイッと拭った。
『……お父様が死んだら……解けるのよね……？』
「！おーーお嬢様ーー」
ルルは息を飲んだ。
「ご、ご当主様を殺すおつもりじゃーー」
『………』
キノはルルから離れ、ベッドの縁に力無く座り込んだ。
『ちょっと考えたけど……私には出来ないわ……お父様ですもの……私の……たったひとりの肉親……お父様とは楽しかった思い出もあるから……』
「……お嬢様……」
コンコン。
ノック音がした。
キノはバッと立ち上がったのと同時に、ルイが入ってきた。
ルイは扉を閉めると、そのままその扉にもたれかかった。
「お前は……諦めが悪いね」
『な、何のことでしょう？』
「あの子達を解放しようと目論んでいるようだけど……ルルから聞かされていないのかい？」
『！』
「ご当主様ーールルは申し上げましたーー」
「そう……では、お前がただ単に納得していないだけなんだね」
『……お父様……もうこれ以上、娘を攫って来るのはおやめください！』
「……」
『28人もいれば充分ではありませんか！お父様をお慕いする彼女達の嫉妬が増えるだけです！！』
「そんなことを気にしているのかい？別に構わないよ」
『構わないって……この前だって……カトリーヌ様が……メイア様を殺しかけたんですよ！』
キノはわなわなと身体を震わせた。
『メイア様を娶られたからーーそれで嫉妬してーー』
「他人の心配をするなんて。なかなかの余裕じゃないか、キノ」
『？何……言って……』
「人の心配よりも……お前は自分の立場をわかっているのかい？」
『っーー！』
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
