29話 ページ30
Aくんの左手の指は、傷の浅かった二本は時間が経てば戻るけれど、三本は骨ごと食べてしまっているから傷が塞がる以上にはならないらしい。
オレがどうAくんの両親に報告したもんかと溜め息を吐くと、Aくんは「いわなくていいよ」と包帯の巻かれている自分の左手を見ながら行った。
「でも、バレた時とか……」
「ラギちゃとかAから報告、されたらそれ相応の、対応をしないといけな、けど、言わなければ、もしかして誰か気付いても、みんな、めんどくさがて、なにも、報告しな、から」
「……」
「A、いちお、家の一員だから、問題お、たら、雑には扱えないけど、なにか、役に立つわけでもな、から、Aのこと大ごとにしても、誰も、なんもいいことな、から」
「……」
Aくんの目は、いつもと変わらない黒くて深くて、ちょっと怖い感じで。
あのAくんが組織の回り方とかをちゃんと考えてそんなことを言っているのに動揺するけれど、本来のAくんはこっちなんだろう。
「ラギちゃ、A、めいわくかけてばっかりで、ごめね」
「その分のお金貰ってるから大丈夫っスよ」
「にゃは」
Aくんはその返答に満足げに笑う。
「かけてもラギちゃが、おかねで買えるめいわくだっておもってくれるくらいのめいわくに、しとかなとね」
「……」
「かけな、方がいいことに、変わりな、けど」
すげぇなAくん、マジで別人かってくらい頭良い、と思ってAくんの顔を眺めていると、Aくんが目をこちらに向けてきて、こてんと微笑む。
その微笑みのまま、自らの指の欠けた左手を、右手で握っている。治癒魔法でもう傷は塞がっているからあんまり痛そうではないけれど、ある指を確かめるようなその仕草はなんだか悲壮感があって、思わずAくんの左手を右手ごと握った。
小さな両手は、オレの片手にすっぽり入ってしまって。
「……」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 138人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
功徳(プロフ) - オパールさん» ありがとうございます！よろしければ他の作品も読んでくださると好みに合うかもしれません🥰 (11月10日 20時) (
レス) id: e0d582f997 (このIDを非表示/違反報告)
オパール - とーっても…面白かったです！この作品を作ってくれて、ありがとうございます！ (11月10日 19時) (レス) @page42 id: e52a8096f8 (このIDを非表示/違反報告)
自分(プロフ) - 新.sinさん» 一気読みありがとうございます！これを気に入ってくださった方は私の別作品も気に入っていただけそうなのでおすすめさせていただいております……💕重ねてお読みいただきありがとうございました🥰🥰🥰 (2022年8月14日 16時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
新.sin(プロフ) - 一気読みしてきました。私が占ツクで見てきた作品史上最も好き！！って思いました！！素敵な作品をありがとうございました！ (2022年8月14日 15時) (レス) @page42 id: 03f8c9269c (このIDを非表示/違反報告)
自分(プロフ) - 黒恋さん» わーーいありがとうございましたお疲れ様でした〜！！！本当にありがとうございます……💕💕💕嬉しい嬉しいなあ…… (2022年6月2日 18時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
