検索窓
今日:8 hit、昨日:27 hit、合計:53,873 hit

1話 ページ2

オレがその子を初めて見たのは、レオナさんの昼飯を買いに行った時だった。

生徒たちがサムさんの前へ押し寄せてる中、ドワーフかってくらい小さい子が1人、少し離れた場所でぐるぐる、ぐるぐる回っていて。思わず半ば反射的に声を掛けた。


「ど……どうしたっスか?君新入生?」

「……」


こちらをばっと向いて足を止めるけれど、その子は何も言わないまま固まっていて。


「えーっと……そんなところでぐるぐる回ってどうしたんスか?」

「焼きそばパンが、なくって」

「あー、人気っスもんね」

「どうしたらいいか、わかんなくなって」

「……なんか別のやつ買ってけば良いんじゃないスか?」

「別のやつって、なに」

「まあそりゃ……なんでもいいっしょ、これとか……これとか」


オレがテキトーに惣菜パンをいくつか渡してやると、その子の手がすぐにいっぱいになるから顔を顰める。


「……誰かに頼まれたんスか?」

「うん」

「あー……ならもう買ってかなくていいと思うっスよ。誰に頼まれたの?」

「誰……誰、だったっけ?」

「それも忘れちゃったんスかー……」


ならもうしょうがないっスよ、と渡したパンを棚に戻してその子にさいならと軽く手を振りレオナさんの所へ戻ろうとすると。

袖を掴まれた。

振り返ってしゃがみ、目線を合わせてやる。


「……どしたんスかー?まだなんか用?」

「……かわ、いい?ね」


その子の小さな指が示す場所には、オレの耳がある筈で。


「あは、オレの耳っスか?気に入ったの?」

「うん」

「ちょっとなら触ってもいいっスよ」

「ありがとう!」


その子は大きくお礼を言って、若干強張った手でオレの耳をさわさわと躊躇しながら触るものだから、くすぐったいのとかわいいので笑いが滲む。

年齢差は1つしか無いだろうが、背丈といい仕草といいチビっちゃくてかわいらしい。

2話→←設定



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (221 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
137人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

功徳(プロフ) - オパールさん» ありがとうございます!よろしければ他の作品も読んでくださると好みに合うかもしれません🥰 (11月10日 20時) (レス) id: e0d582f997 (このIDを非表示/違反報告)
オパール - とーっても…面白かったです!この作品を作ってくれて、ありがとうございます! (11月10日 19時) (レス) @page42 id: e52a8096f8 (このIDを非表示/違反報告)
自分(プロフ) - 新.sinさん» 一気読みありがとうございます!これを気に入ってくださった方は私の別作品も気に入っていただけそうなのでおすすめさせていただいております……💕重ねてお読みいただきありがとうございました🥰🥰🥰 (2022年8月14日 16時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
新.sin(プロフ) - 一気読みしてきました。私が占ツクで見てきた作品史上最も好き!!って思いました!!素敵な作品をありがとうございました! (2022年8月14日 15時) (レス) @page42 id: 03f8c9269c (このIDを非表示/違反報告)
自分(プロフ) - 黒恋さん» わーーいありがとうございましたお疲れ様でした〜!!!本当にありがとうございます……💕💕💕嬉しい嬉しいなあ…… (2022年6月2日 18時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:わたし | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年10月26日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。