20話 ページ21
それでもオレが冷蔵庫の中身を確認してAくんに何を作ってやろうか考えていると、顔を洗い終わったらしいAくんが、いつものふらふらした足取りでキッチンに入ってくるから。
「……どうしたっスか?もうお腹減っちゃった?」
オレが声を掛けても、Aくんは返事をしない。
Aくんはオレの背後の食器の水切りからナイフを──ナイフを、取って。
「……危ないっスよ、Aくん」
背筋がぞわぞわするのを押し殺してオレは言う。Aくんはナイフに映った自分の顔を眺めている。
「……どうしたんスか、Aくん。一緒に料理したいなら」
Aくんはがっとオレの方へ顔を向け、くるりと包丁を逆手持ちに変え──
「っ……!」
オレは勢い良くその場から飛び退く。Aくんがナイフを刺した先は。
ついさっきまで、オレの腹があったところで。
戸棚に突き刺さったナイフを、Aくんは足を支えにしてぐっと抜いて。
再度、こちらに、視線を向けた。
「……し、死んじゃうっスよ……?」
ナイフなんていうものを使っている時点で、Aくんが本気でオレのことを殺しにきてる訳じゃないことはわかる。けれど、それでも、あれが変なところに刺さればオレは死ぬ。
「ね、ねぇ、Aくん……どうしたんスか?それは……遊びじゃ済まねぇっスよ。オレ死んじゃうっス」
Aくんは包丁の持ち手を小さな手の中でくるくる回して。
「っい゛!?」
尻尾に痛みが走って飛び退くけれどオレは空中で何かにぐいっと引っ張られてそのまま尻から落ち──尻尾に謎の激痛が走──Aくんが何かを投擲したような手の形をしているのを見て尻尾を振り返ると。
138人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
功徳(プロフ) - オパールさん» ありがとうございます!よろしければ他の作品も読んでくださると好みに合うかもしれません🥰 (11月10日 20時) (レス) id: e0d582f997 (このIDを非表示/違反報告)
オパール - とーっても…面白かったです!この作品を作ってくれて、ありがとうございます! (11月10日 19時) (レス) @page42 id: e52a8096f8 (このIDを非表示/違反報告)
自分(プロフ) - 新.sinさん» 一気読みありがとうございます!これを気に入ってくださった方は私の別作品も気に入っていただけそうなのでおすすめさせていただいております……💕重ねてお読みいただきありがとうございました🥰🥰🥰 (2022年8月14日 16時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
新.sin(プロフ) - 一気読みしてきました。私が占ツクで見てきた作品史上最も好き!!って思いました!!素敵な作品をありがとうございました! (2022年8月14日 15時) (レス) @page42 id: 03f8c9269c (このIDを非表示/違反報告)
自分(プロフ) - 黒恋さん» わーーいありがとうございましたお疲れ様でした〜!!!本当にありがとうございます……💕💕💕嬉しい嬉しいなあ…… (2022年6月2日 18時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ