5.ラズベリーは恋の味 ページ7
「ありがとうございましたー」
ケーキの箱を持ったお客様が笑顔で帰っていく。
その時に見る幸せそうな後ろ姿が、私に頑張ろうという気力を与えてくれている。
「今のお客様で、最後ですかね」
「うん。もう後ちょっとで終わりだし、上がっていいよ」
私がそう言った数分後、バイトの子は「お疲れ様でした!」と行って帰っていった。
一人になったお店のカフェスペースに座って一息つく。
閉店まで後5分。
もう少ししたら、私も帰ろう…。
そう思って少しウトウトしていると、チリンチリンという音と共に扉が開いた。
私は一気に目を覚まして「いらっしゃいませ!」と言った。
「あ……前園さん」
「蛇賀君…」
お店に入ってきたのは、少し息を切らした蛇賀君だった。
「ごめん…まだ、やってる?」
「う、うん!もうあんまり残ってないけど…」
そう言いながら見たショーケースには大人気のいちごショートが一つと、ラズベリーのタルトしか残っていなかった。
「あぁ…じゃあ、このタルト一つください」
「かしこまりました」
タルトを包んでレジ打ちをしていると、蛇賀君が私に話しかけてきた。
それもど直球で。
「あのさ、連絡先、聞いてもいい…?」
「へっ……な、なんで?」
びっくりして顔を上げる。
「…せっかく再会できたから、色々話したいし…それに…」
は、話したいって…まさか…
あの日の事を、やっぱり恨んで…!?
そう思って青ざめるが、すぐにそれもそうだよねとうつむく。
黙り込んでしまった私を心配そうに見つめて蛇賀君が言う。
「…やっぱり、迷惑だった…?」
そ、その顔は反則だよ…ルール違反…。
なんでそんな子犬みたいな顔するの!
「う、ううん!…はい」
蛇賀君の子犬フェイスに負けた私は恐る恐る名刺を差し出した。
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ちた - 更新楽しみにしてます! (2021年8月11日 1時) (レス) id: daa16f4a74 (このIDを非表示/違反報告)
珍妙な眼鏡(プロフ) - 更新待ってます! (2021年7月27日 10時) (レス) id: 6503161f4b (このIDを非表示/違反報告)
床に寝転ぶ猫 - 初めまして!鏡子さんのうらみちお兄さんシリーズがとても好きです!更新いつまでも待っております!! (2019年8月1日 16時) (レス) id: 52e5b5915e (このIDを非表示/違反報告)
毒蜘蛛 - 更新待ってます^^* (2019年6月2日 1時) (レス) id: a1f2b3bb01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鏡子 | 作成日時:2019年2月20日 18時