検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:25,595 hit

69話 ページ25

「ルカは、最期までAの幸せを願っていた。

  だからアンタは生きて幸せになるべきなんだ」


ここで死なせるわけにはいかない。とアンドルーは続けた。


幸せになってほしい、幸せになるべきだ。

思い返せば、ルカは何度もこの言葉を口にしていた。


 『Aさんが今辛いのも悲しいのも、痛いほど分かります。

  でも、僕たちはルカさんの分まで生きていかなくちゃいけないんです』


ビクターがしゃがみこみ、私にメモ帳を差し出した。

そこに綴られた文字を見るや否や、またも涙腺が緩んでしまう。


 「ビ、クター……アンドルー……」


名前を呼ぶと、つられたかのようにビクターの頰が涙で濡れていく。


アンドルーはそっぽを向いていて表情こそ分からなかったが、肩が震えている。

きっと泣くのを堪えているのだろう。


 『もう1度、ルカさんからの手紙を読んでみてください。

  きっと、何かが変わるかもしれません』


ビクターはそう綴ったメモを私に握らせ、微笑んだ。

そして立ち上がり、アンドルーと共に墓地の入口へと姿を消していった。


ーーーーーー

2人がいなくなった後、鞄に入れていた手紙にもう1度目を通してみた。


ルカに拒絶されたあの日。

何か隠しているのは分かっていたのに、結局私はルカの言葉を素直に受け取ってしまった。

私は発明の邪魔でしかないのだと、だからあんなふうに遠ざけられたのだと。


でも、違った。


ルカはずっと私を好きでいてくれてた。

愛してくれていた。


私の幸せを思って、自分の気持ちを押し殺してあんなことを……。


あの時、ルカはどれだけ辛かったのだろう。

きっと私なんかよりずっと、ルカの方が傷ついていたはずなのに。


好きだったのに、大好きだったのに。

私はルカが抱えているものに何ひとつ気付くことが出来なかった。


もしも、少しでも私が何かに気付いていれば、

こんな結末を迎えることはなかったのだろうか。


考え出せばキリがないけれど、考えてしまう。


私は最後に墓石をひと撫でして、そっとその場から立ち去った。

70話→←68話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (81 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
90人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

セルナ(プロフ) - 久々に占ツクでガチ泣きしました。こんなステキな作品をありがとうございまし。また、書く機会があれば応援しています! (2021年2月22日 1時) (レス) id: 9cc0fe1068 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - 野生の王者さん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません……!なんと嬉しいお言葉……!!この作品だけでなく他の作品も読んでくださってありがとうございます!!! (2020年9月3日 0時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
野生の王者(プロフ) - 完結おめでとうございます!陰ながらずっと応援させていただきました。どの作品も面白く、涙ながらに読ませていただきました。まるで当事者のように胸が苦しくなり、切なくワクワクしました!素敵な物語をありがとうございました!これからも応援しています! (2020年8月30日 12時) (レス) id: 3c825fe033 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - 沙羅さん» ここまで読んでくださって本当にありがとうございます……!!とても嬉しいお言葉……!!心情描写は頑張りました!!笑 こんな結末で申し訳ないです……。救済できるよう頑張りますね……! (2020年8月28日 2時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 完結おめでとうございますと、お疲れ様です…!久々に文字を読んで涙した気がします…深い…。。れみこさんの書くお話はキャラクターの心情とかの描写が細かくてほんと尊敬します…(心がきゅぅってなりました…)ぜ、是非とも皆に救済を…! (2020年8月27日 17時) (レス) id: 3aa856ffa1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:れみこ | 作成日時:2020年8月8日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。