48話 ページ3
はたから見ればルカの言ってることと私への態度は噛み合っていない。
意味がわからない、矛盾している、真逆だ。
だけど今はそこまで考えられる余裕はなかった。
降り注ぐ凶器のような彼の言葉を、受け止めるのに精一杯だった。
「これで分かっただろう。
もう私に付き纏ったとて君にメリットはない」
「……ま、待って!」
話しは終わりだ、と言わんばかりに踵を返し、足早に去ろうとしたルカを咄嗟に引き留める。
控えめに服の裾を掴んだ手は、自分でもびっくりするくらい震えていた。
「メリット、とか私はそんなので……」
「……離してくれ」
乱暴にその手を払うと、ルカは振り返ることなく船を後にした。
ひとり取り残された私。
追いかける気力もなく、ただ床に崩れるように座り込む。
「……どうして……」
ルカは、本当に私を邪魔だと思っていたのだろうか。
でも、邪魔だと思ってたならもっと早くに言ってるだろう。
大事な発明の時間を削ってまで、私へのプレゼントを作った意味も理由も分からなくなる。
ずっと迷惑だと思ってた相手に、なんであんなにも優しくしたの。
どうして、なんで、どうして。
ーーもう何も考えたくない。
ただただ、悲しい。
冷たい目、無機質な声、棘を持った言葉。
その全てが悲しみの海となり私をまるごと飲み込んでいく。
「うっ……ひぐっ……うぅぅ……っ」
襲いくる悲しみに耐えきれなかった私は顔を覆い、ひとりぼろぼろと涙を流していた。
こんなにも泣いたのはいつ以来だろう。
ーーあぁ、確か音楽室でルカの前で泣いたことがあったっけ。
あの時、ルカは私を抱きしめてくれた。
そして腕の中で泣いている私の背中を優しく撫でてくれた。
でも、もういない。
抱きしめてくれる腕も、撫でてくれる温かな手も。
私を落ち着かせてくれる声も、労ってくれる声も、何もかも。
きっとルカはもう、何があっても私を抱きしめてくれない。
それだけは確かーー。
湖景村を照らしていた夕日が夜の準備をはじめ、辺りが暗くなっていく。
もうすぐ夜がやってくる。
その時、甲板まで登ってくる誰かの足音が聞こえた。
「……ビクター……?」
涙に濡れたぐしゃぐしゃの顔を上げる。
すると目の前にいたのは辛そうに顔をしかめるビクターだった。
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セルナ(プロフ) - 久々に占ツクでガチ泣きしました。こんなステキな作品をありがとうございまし。また、書く機会があれば応援しています! (2021年2月22日 1時) (レス) id: 9cc0fe1068 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - 野生の王者さん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません……!なんと嬉しいお言葉……!!この作品だけでなく他の作品も読んでくださってありがとうございます!!! (2020年9月3日 0時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
野生の王者(プロフ) - 完結おめでとうございます!陰ながらずっと応援させていただきました。どの作品も面白く、涙ながらに読ませていただきました。まるで当事者のように胸が苦しくなり、切なくワクワクしました!素敵な物語をありがとうございました!これからも応援しています! (2020年8月30日 12時) (レス) id: 3c825fe033 (このIDを非表示/違反報告)
れみこ(プロフ) - 沙羅さん» ここまで読んでくださって本当にありがとうございます……!!とても嬉しいお言葉……!!心情描写は頑張りました!!笑 こんな結末で申し訳ないです……。救済できるよう頑張りますね……! (2020年8月28日 2時) (レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 完結おめでとうございますと、お疲れ様です…!久々に文字を読んで涙した気がします…深い…。。れみこさんの書くお話はキャラクターの心情とかの描写が細かくてほんと尊敬します…(心がきゅぅってなりました…)ぜ、是非とも皆に救済を…! (2020年8月27日 17時) (レス) id: 3aa856ffa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れみこ | 作成日時:2020年8月8日 17時