【第五人格】再会は何処にて【続編】

49話 ページ4

「……わたし、ルカに、振られちゃったぁ……」


泣きながらでもなんとか笑ってみせた。

ビクターは悲しそうな表情を浮かべ、同じように床に座り込む。

そして私の体を強く、強く抱きしめてきた。


　「迷惑だって、言われちゃった……悪いこと、しちゃった」


そんなことないと、ビクターは首を左右に振った。

でも、とまた何か言いかけるとビクターの腕の力が強まる。


　「うぅっ……るか、ルカぁ……ああぁ……っ」


もう何も言わず、ビクターにしがみついて彼の名を呼ぶ。

子供のように声を上げてわんわんと泣く私を、ビクターはただ黙って抱きしめてくれていた。


ルカよりも少しあったかい、ひだまりのようなぬくもりが私を優しく包み込んでくれる。


　「……ごめんなさい」


ビクターは小さな声で呟いた。

だけどそれは私の耳に入ることなく、空気と一緒に飽和して消えたーー。


ーーーー


　「あれで、よかったのか」


湖景村の入り口へ、いつも以上に陰気な顔つきをしたアンドルーと向かっていた。

眉をひそめ、不機嫌そうに此方を睨んでいる。


　「……いいんだよ。

　 今なら、私のことなんてきっとすぐ忘れられるさ」

　
その言葉に、まるで糸が切れたようにアンドルーの顔が怒りの形相へと変貌していった。

勢いよく私の胸ぐらを掴んで、叫ぶ。

　
　「ふ、ふざけるなよ……！！簡単に忘れられるわけないだろ……！？

　こんなの、ビクターは納得しても僕は納得しない……！！」


アンドルーは辛そうに、泣きそうに顔を歪めながらそうまくし立てた。


　「後悔しても、知らないからな……！！

　 Aをあれだけ傷つけておいて、後から何言ったって」


ふと、アンドルーの怒声が止まった。

息を荒げ、驚いたように目を見開いて硬直する。


　「……全部、分かってるさ」


つぅ、と自身の頰に一筋の涙が伝った。

どんどんと滲んでいく視界、落ちていく涙。それを隠すために手で顔を覆った。


　「もう、決めたことなんだ」


言い切ったつもりでも、その声は情けないくらい震えていて。


……あぁ嫌だ、私に泣く資格なんてあるはずないのに。


どうしてこうも止まらないんだろう。


　「……クソっ、クソが……！！」


アンドルーは掴んでいた胸ぐらを離し、思い切り私の体を抱きしめた。

そして肩を震わせ、嘆く。


　「……すまないね」


力強いアンドルーの乱暴な抱擁は痛くて、苦しかった。

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