【第五人格】再会は何処にて【続編】

58話 ページ13

少し細いけれど骨ばった、私のものよりは大きな手。


その手をそっと口元に寄せ、キスをひとつ落とす。

唇から伝わる温度と皮膚、骨の感触をひととおり確かめてからそっと唇を離す。


そして祈るように、願うようにその手をぎゅっと握りしめた。


　「……発明、大事にしてね」


涙でぼやける視界、頰がこぼれ落ちた雫で濡れるのを感じながら、

それでも笑ってみせた。


上手く笑えていなかったのだろう。

ルカはとても辛そうな表情で此方を見ていた。


もう充分。もう限界。

これ以上ルカといると、まだ一緒にいたいと望んでしまう。


終わりにすると決めていた。伝えたいことは伝えられた。


　「……おやすみ」


ルカの手を離し、振り返ることなくバルコニーを後にした。


これでいい。

きっとこれでルカは私のことなんか気にせず、心置きなく発明に集中できる。


ルカのため。大好きな人のためなら。


この胸の痛みも、悲しみも、何もかも見なかったことに出来るからーー。



ーーーー

あれから数ヶ月が経ったある日、荘園でのこの狂った毎日は突如終わりを迎えた。

荘園の主は私たちに『次のゲームが最後だ』といきなりこう告げたのだった。


そのゲームで脱出不可能だった者は死に、脱出できた者は生き残りとして外に出られる。

やり直しの効かない、1度限りのゲーム。


出来る限り皆が生きて出られるよう、チーム編成は慎重に行われた。

私がチームを組むことになったのはイライ、ヘレナ、アンドルー。

各チームの代表者で話し合った結果、私たちは一番最後に試合を行う、とのことだった。



幸運にも私たちのチームは4人で脱出することが出来た。

一番最後、ということで荘園に戻れば誰が生き残って、

誰が死んでしまったのか全て分かってしまうのだった。


不安を胸に荘園に戻ると、ひとまずは安心した。

皆で対策を練ったからか、想像していたよりは生き残っている者が多かったのだ。


ビクター、トレイシー、ナワーブ、マーサ……

ひとりひとり、確認していくとやはり姿が見当たらない人も何人かいて。


ゆっくりと荘園内の大部屋を見渡していると、部屋の隅にルカがいた。


　「……！」


ルカの姿を捉えた瞬間、全身の力が抜けていくような気がした。

心の底から安心した。……彼が生きていてよかった。


きっと荘園から出て、もう会うことはないだろう。

だけどやっぱりここでルカと死別するだなんて、きっと耐えられないだろうから……。

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