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意外な返答に、思わず声が漏れる。
俺のスパイクを見たい?なんで?
「中学生の時に有名だった、て話したろ。
あのときさ、かっけぇって思ったんだよ。でも会ってみたら、もうスパイク打てなくなってて…
話聞いたとき、もっかい見たいって思った。なんなら木兎も同じこと考えてたけどな。
だからまぁ…メリットどうこうの話じゃなくてさ、好きでやってんだよ」
俺が見たあの試合で、楽しそうに跳んでる鈴鳴Aをもう一回見たいんだよ。
「…よし休憩終わり!コート戻れー!」
『…ぅえっ、ちょっ…!!』
話し終えて、しばらく沈黙が続いた。ツッキーも木兎さんも赤葦くんも黙って聞いていた。
その空気に耐えられなかったのか、パンパンと手を叩いて強制的にコートに戻された。
黒尾さんの話したことを、そのままそうですか、と受け入れることは多分できない。
だって見たいなんて思っても、じゃあ俺らがそうしてやるなんて考えるか普通。
でも、この人たちとそんなに長くいるわけじゃないけど、彼らがバレー馬鹿で、お人好しなことはもう十分に知っている。
「ずーなり!早くー!」
『…ありがとうございます』
本当に仲間に恵まれた。彼らのためにも、自分のためにも、また跳びたい。
「? 鈴鳴なんか言った?」
『いや、何も。…よし!行くぞツッキー!』
「だからやめてくださいその呼び方…」
言葉じゃなくて、もう一度跳んでこの感謝を伝えられるように。
それから、もうすぐで食堂閉まるんじゃね、という黒尾さんの一言に全員が我に返り、我先にと体育館から飛び出した。
あのツッキーでさえ忘れていたくらいみんな集中していたらしい。
試合をしては自主練、睡眠、そしてまた次の日に試合。
一週間あった合宿も四日目、五日目と過ぎていき、段々と終わりが見えてくる。
気づけば六日目。俺はというと、あれから理想のフォームの感覚を掴んだはいいが、それがまだ安定して出ないし、赤葦くんのトスとうまく噛み合わない。
本当なら影山くんと合わせたほうがいいんだろうけど、彼も自分の練習に忙しい。
「よし、今日こそ成功させるぞ!」
『ほんと毎日ありがとうございます…』
「惜しいとこまではいってるからあと少しなんだけどなー」
赤葦くんはもう位置についている。
今日、絶対決める。決めなければいけない気がする。
大きく深呼吸をして、お願いします、合図を出す。
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あなくま(プロフ) - あっびーさん» ありがとうございます!気まぐれ更新ではありますが頑張ります!澤村さん直してきますすみません (7月3日 6時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
あっびー - コメン卜失礼します!話とてもおもしろかったです!がんばってください!あと澤村が沢村になっていました (7月2日 15時) (レス) @page5 id: 9335c42a96 (このIDを非表示/違反報告)
あなくま(プロフ) - 怜央さん» ほんとですね…教えていただきありがとうございます!実は前にも消えちゃってたのでまた同じようなことがあるかもしれません…気をつけます! (2022年10月14日 20時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
怜央(プロフ) - コメント失礼します!36話が消えちゃってますよ〜! (2022年10月14日 20時) (レス) id: 8acdf4d0f3 (このIDを非表示/違反報告)
あなくま(プロフ) - ありがとうございます!できるだけ早く更新できるように頑張ります! (2022年10月13日 16時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あなくま | 作成日時:2022年9月24日 14時