存在 ページ36
……額には、恐怖からか焦りからか、それとも、もっと違う何かからか、じんわりと汗を滲ませていた。額から頬を伝い、顎の先でそれは音もなく落ちていく。心臓は煩いほど音をたて、胸は痛みを帯びていく。息をするのを忘れそうになる。
……私は、銀ちゃんに信用されていない。そう、男から言われたことが、何故かとても苦しかった。本気にしなければいい話なのに。何か見えない力に胸を握り潰されているかのような痛みに、目にはうっすらと涙が溜まり、視界が少し眩んでいく。
「っ…」
男「可哀想になァ、信用もしてねェくせによくもまぁ好きになったもんだ」
肝の据わった野郎だな、と。ソイツらは嘲笑うように笑う。下品で、渇いたような笑い声は、とてもとても耳障りで、眉を寄せてしまう。でも、それよりも、心臓が痛い。
……銀ちゃん、私、私は、
……アンタにとって、どういう存在?
心の中でそう問い掛けるも、返事は返ってはこない。聞こえるのは男達の笑い声。私は銀ちゃんにとって、どんな存在でいられているのだろう。そんなこと、考えたこともなかった。
私にとって銀ちゃんは、……言葉には現せないくらいに大きな存在で、他の誰も代わりにはなれなくて、かけがえのない、大切な存在。銀ちゃんの言葉に、笑顔に、何度救われただろう。けれど。
……私は銀ちゃんに、何かしてあげられた?
分からない。銀ちゃんにとって、私がどういう存在として、ソイツの中に居るのか。
……信用されていないから、だからこそ、銀ちゃんは私に、何も言わなかったのか、……言えなかったのか。
「…っ、」
男「可哀想なお嬢ちゃんに、教えてあげようか」
男はまた不愉快な笑みを浮かべたまま、私をくすんだ色をした目で見つめる。その目を見ないまま、声だけを私は聞いている。視界はもう既に、眩んでいてよく見えなかった。
男「10年前、お前さんの男が何をし、何を見て、何故か白夜叉と呼ばれるようになったかを」
「……」
……嫌な響きを持った声は、私のよく知る声とは大違いで。
カタカタと微かに震えている身体を強ばらせる。震えを押さえたくて。こんな弱い姿を、こんな奴等に見せたくなくて。泣き顔を見せたくなくて、顔をうつむかせる。
……銀ちゃんが、『白夜叉』が、10年前、何をして何を見て、何故白夜叉と呼ばれるようになったのか。
それを語ろうと男の口元が動く。
男「それはなァ……、」
「……」
………銀ちゃん、私は…、
ー・・私は。
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ピピコ - 銀岬さん» ご心配のお言葉、ありがとうございます…!!もう全然大丈夫です!昨日大雨に打たれましたがもう完全復活しましたので!!この物語も終わりへと向かっておりますので、無理はしないように、頑張らせて頂きます!ありがとうございました! (2017年7月19日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
銀岬(プロフ) - 失礼します!風邪大丈夫ですか?体調は気をつけてくださいね!更新無理しない程度に頑張ってください! (2017年7月19日 22時) (レス) id: 6f2670004d (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - 狭霧さん» 沢山話しかけてくれて嬉しいです^^ ご心配ありがとうございます!はい!もうすぐに直して私も銀魂映画観に行きます!!もう楽しみでテンション上がりますね!! (2017年7月17日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
狭霧 - またまたコメントさせていただきます!風邪治りかけは一番大切ですよ気を付けてくださいね。映画見てないけど見る予定絶対見たいでーーす!テンションアゲアゲです!! (2017年7月17日 18時) (レス) id: db8d44fdf5 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - ミンティアさん» ご心配ありがとうございます…!!ホント、もう治りかけなので大丈夫です!励ましのお言葉、とても嬉しいです^^ウッヒョーイですね!早く映画見たいです!! (2017年7月17日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年7月4日 17時