【銀魂】空想世界が現実世界 7【坂田銀時】

間違ってる ページ33

…ずっと、つけられていたのだろうか。私はずっと、さっきまでずっと浮かれていて、そんなこと気づきもしなかった。コイツらが目の前に現れるまで、自分に迫る危機に気づかなかった。バカにも程がある。


男「いやいや、でも驚いたぜ？お嬢ちゃん、『狂乱の貴公子』殿とも、真選組一番隊隊長殿とも知り合いだなんてな」

「は？」


…何を言っているのだろうか、コイツは。一番隊隊長は分かる。あの忌々しきドS野郎、沖田総悟のことだ。だが、『狂乱の貴公子』なんてのは知らない。聞き覚えもない。通り名、のようなものだろうか。ていうより、


「…つまりアンタらは、ずっと私をつけてた訳だ」

男「ご名答。その通りだ。俺達は、お嬢ちゃんをつけてた」


取っ捕まえるためにな、と。ソイツは笑う。悪意の塊にしか見えないその笑みに、嫌悪感を覚える。最早コイツらには嫌悪感しか抱かない。こんな連中に一日つけられていたと思うと吐き気がするし、気づけなかった私がどうしようもなくて頭痛がしてくる。

咳こみたくなるほどに埃っぽいこの場所には、なんの音もしない。車の音も。静かなこの空間に聞こえるのは、男達の声だけだった。この場を満たす音がそんなものしかなく、色んな意味で絶望的な気持ちになる。


市街地からは離れているのだろう。周囲は木々に囲まれているらしい。倉庫に辛うじてある小さな、割れた窓から見える景色は、ただただ緑色だった。


「…で、アンタらは何がしたいの？私を売りさばきたいの？」


まぁ、大方そんな所だろう。今まで出会ったこういう連中は金目当ての奴等ばかりだった。が、中心人物なのだろう男は首を横に振る。


男「いや、んなことはしねェさ」

「え…じゃあ何を…」


そこで私はあることに思い当たり、ハッとする。まさかコイツら。


「ねぇ、誘拐する人間間違ってるアンタら」

男「あ？」

「私んとこ身代金払えるほど金ないから！！」
男「いや請求しねーけど！？」


と。私の言葉に男は何言ってんのコイツ、とでも言うような目線を送ってくる。誘拐犯にそんな目線を送られるとは思ってもみなかった。屈辱的である。が、どうやら身代金でもないらしく。


「…じゃあ、何のために…」


…金銭的な目的ではないのなら、一体コイツらは何のために私を捕らえたというのだ。他に理由が見当たらない。恨まれるようなこともした覚えはない。睨みに近い目付きでソイツらを見上げてはそう口にした。

すると男は、口元を歪ませニタリと笑みを見せると、口を開いた。


男「…隠したって無駄だぜ？お嬢ちゃん、


……白夜叉の女だろ？」

『白夜叉』→←どこで、何を

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す