矛盾 銀時side ページ29
『銀ちゃん』
……脳裏に思い浮かべればすぐに、一瞬でその声は俺の頭の中に響く。Aの声が、俺の名前を呼ぶ。その、愛しい声で。目の前で呼ばれている訳ではないのに、思い出しただけでその声は、俺をどうしようもなく安心させ、『好きだ』という気持ちを大きく膨らませる。
……今すぐに、会いてぇと思わせてしまうほどに。
だからこそ、そんな大きく、かけがえのない存在だからこそ、俺はAに怯えられるのが怖いのだ。あの声で、俺を拒む言葉を投げつけられたら。想像しただけで、苦しくなる。
桂「だから、お前が過去を語ることを躊躇う理由も解る。話すか話さないかはお前次第だ。だが、……俺はずっと隠し続けることを最善だとは思わない」
銀「……あぁ」
…俺は静かに頷いた。それがヅラのバカみてェに真っ直ぐな目にどう映ったのかは知らねぇが、俺自身は肯定したつもりだ。過去をAに知られたくはない。だが、それが最善だとは、俺も思っていない。
桂「……過去を話すことで、A殿がどう思うのか、俺は分からん。だが、」
と、ヅラは俺の目の奥まで見据えるかのように見つめ、続ける。
桂「……銀時、A殿を理由に逃げようとするのだけはやめろ」
銀「……」
……やはり、長年の付き合いというのは相当面倒なもので、俺が考えていることなんざ、どうやらコイツにはお見通しな様子で。俺は思わず溜め息をついて渇いた笑みを溢してしまう。
……どうにも、コイツには何も、隠し事は出来ねぇらしい。
桂「それはお前がA殿を信用していない事になる。きっとそれは、お前の過去を知ることより何より、彼女を傷付けることになる」
銀「……」
……何も語らないことを、最善だとは思えない。それは、そう。その通りだ。……俺がAを、信じてない事と同じだからだ。そんな事はないのに、俺は誰より、アイツを信じていたいのに。
…そんな矛盾が、俺の心を掻き乱す。
銀「…なぁヅラ、…んな事聞くのは情けねぇがよォ……」
…今の俺は、ヅラにどんな風に見えているだろう。ヅラの目を覗き込んだら、どんな俺が映っているだろう。きっと、これ以上ねェくらいに、情けない弱々しい笑みを浮かべていることだろう。
銀「……俺は、どうしたらいい」
……そんな、まるでガキみてェな問いを、ソイツに投げかけた。
カチ、カチ、という時計の秒針が進んでいく音が淡々と聞こえてくる。残酷に、儚くも、時間は進んでいく。俺の中に迷いを残したまま、それでも進んでいく。
……カチ、カチ。その音は、どうにも俺を焦らせる。
244人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ピピコ - 銀岬さん» ご心配のお言葉、ありがとうございます…!!もう全然大丈夫です!昨日大雨に打たれましたがもう完全復活しましたので!!この物語も終わりへと向かっておりますので、無理はしないように、頑張らせて頂きます!ありがとうございました! (2017年7月19日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
銀岬(プロフ) - 失礼します!風邪大丈夫ですか?体調は気をつけてくださいね!更新無理しない程度に頑張ってください! (2017年7月19日 22時) (レス) id: 6f2670004d (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - 狭霧さん» 沢山話しかけてくれて嬉しいです^^ ご心配ありがとうございます!はい!もうすぐに直して私も銀魂映画観に行きます!!もう楽しみでテンション上がりますね!! (2017年7月17日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
狭霧 - またまたコメントさせていただきます!風邪治りかけは一番大切ですよ気を付けてくださいね。映画見てないけど見る予定絶対見たいでーーす!テンションアゲアゲです!! (2017年7月17日 18時) (レス) id: db8d44fdf5 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - ミンティアさん» ご心配ありがとうございます…!!ホント、もう治りかけなので大丈夫です!励ましのお言葉、とても嬉しいです^^ウッヒョーイですね!早く映画見たいです!! (2017年7月17日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年7月4日 17時