【銀魂】空想世界が現実世界 7【坂田銀時】

真っ直ぐに　銀時side ページ28

…白夜叉。

10年前、俺はそう呼ばれていた。立ち塞がる敵を何人も何人も斬って斬って斬りまくって、真っ赤な血を浴びまくって、そうしてついた通り名がそれ。今では伝説の志士だと言われているらしい。だが、そんなのは名前だけで。所詮は人殺しだ。


……自分が最も愛する人間に、そんな事を知られてぇと思うか？思うはずがねぇだろう。そんな自分のことなんざ、Aに知られたくねぇ。

…もし、俺の過去を知って、アイツは何を思うだろう。俺は、Aが俺を見て、あの目で俺を見つめて、怯えの色を映されたら。Aに、拒絶されたりなんかしたら。


ー・・きっと、今度こそ立ち直れやしない。


桂「……話さないのか、A殿に」

銀「…さぁな」


今のところ、話すつもりはない。別に、話す必要がないだろうし、何より、……Aに俺の過去を語る勇気が、ない。情けないにも程があるが。

先程から、ヅラは俺の目を覗き込むかのように見てくる。それを俺は不自然に逸らし続けている。ヅラはヅラで、俺が意図的にそうしていることを解っているから、しつこく俺から目を離さないのだろう。腐れ縁っつーのも、面倒なもんだ。


桂「…まぁ、好きにするといい。俺に口出しする権利はないしな」

銀「…」


ヅラは何も返さない俺にそう言うと、「だが、」と続ける。真剣味を帯びているその目が、俺を貫くかのように見つめ続けている。


桂「…A殿なら、大丈夫だろう」

銀「……、」


…そんな言葉に、俺は思わずヅラの顔を見やる。すると、してやったり的な笑みを薄く浮かべるもんだからイラッとくる。コイツのドヤ顔は妙に苛つく。


桂「A殿は強い。きっと彼女なら……どんな話でも聞いてくれるだろう」

銀「…」


……分かってる。Aは強い。
それは、分かっているのに、分かっていたのに言えねぇのは結局、俺が怯えているからだ。Aを理由にして、逃げようとしているから。


……テメーの女を理由にして、逃げるなんざ、最悪だな、マジ。


桂「……銀時、お前がA殿をどれだけ大切に想っているか、俺は俺なりに解っているつもりだ」


……と、ヅラは未だに俺を真っ直ぐ見つめながら、そう再び口を開く。


それに俺は、やはり何も言えやしない。だが、目を逸らすことだけはやめた。そのアホは、きっと俺がどれだけ逃げようとしても、無駄だと思わせるほどに追い掛けて来るだろうから。

ただ何も言わないまま、俺はヅラを見据える。

……俺なりに、真っ直ぐに。

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