♂/切ない/ﾀﾋ有 ページ12
俺は、どこで道を間違えたのだろう。
激痛が走る腹。
痛みに耐え切れず、現実逃避に近い反省をする。
え、今更するの？って位遅いものの、せずにはいられない。
彼女を残った力で抱きしめ、
口から出た言葉は「ごめん」だった。
「なんで、謝んのよぉ〜」
泣いてるからだろうか。彼女の声が震えてる。
俺のせいだと思うと胸が痛む。
「お前を泣かしちゃったからなー。
こんな出来の悪い彼氏で本当、ごめんな？」
浮気はしなかったけど、女友達と会わないわけじゃない。
記念日とかは忘れなかったけど、祝ったことはない。
電話に出ても、メールやl_neを返すことは少ない。
デートは何度もしてたって、旅行は一度もない。
挙げればキリがない。
でも、それでも唯一誇れたことはある。
彼女を泣かせなかったこと。
まぁ、俺の知らないとこで泣いていたかもしれないけど…。
それに、今泣かしているんだから、その誇りすらなくなった。
彼氏、失格かな？
出来の悪い、出来損ないでごめん。
「花見したかったなー。桜の花と葉が交じってる花見」
そろそろお別れみたいだから。
せめて最期に願望だけは言わせて？
もう決して叶うことのない願いだから。
「夏祭りとか、紅葉狩りとか、したかった」
どもって、詰まって、呂律すら怪しくなってくる。
限界かなー。結構早かったなー。ちくしょう。
「けど、お前との日常が一番好きだった」
彼女を抱く腕に力が入らなくってくる。
立つことも難しくなって、後ろの壁に体重を預ける。
「あっ、…あ、」
混乱しているのか、言葉の出ない彼女。
その手は俺の腹から出るモノから離れ、胸部の服を掴んでいる。
不謹慎だが、彼女のこの表情も愛おしい。
「ごめんな。
ありがとう」
俺は目を閉じ、身体から力を抜いた。
遠ざかる意識の中、彼女が何か言った気がした。
____「あいしてる」の５文字をあなたに
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作者名：秋花火 | 作成日時：2015年12月3日 20時
