95話 ページ47
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「………………っ、……ぅ……うぅ…」
心地佳い夢の中から一転、謎の寝苦しさで意識を取り戻した。
その寝苦しさの原因は、暑くもなければ喉の乾きでもない。何処か息苦しい、それだけだった。
『寝ている時間、常に結界魔法を持続させている為に私の少ない魔力の限界が近付いていたから』と私は勝手に結論付けた。
実際、私とベッドを覆っていたシアンの色をした結界は消えていたのだから。
ベッドから起き上がったは佳いが、一度起きてしまっては二度寝はしにくい。目だってしっかり覚めてしまった。
今は真夜中。本でも読んでいようかと思ってベッドの縁へと足を投げ出す。澁澤さんだってぐっすり寝て………………………………
「……い、ない……」
視線の先のベッドの上にはあの全身白男の姿は見えなかった。そこにあるのは、抜け出したかのように捲れ上がった布団だけだった。
夜散歩に出掛けたのか、はたまた問題を起こしに行ったのか。
……後者であれば大変だ。彼が問題を起こす理由は見つからないが、既に事が起きていたら責任は私にある。彼を回収しに行かねば。
はぁ、と深い溜息を一つ零して私は夜の廊下へ歩き出した。寝付けなかった所だ、丁度佳いだろう。
●〇●
「……………貴方は此処で何をしているのですか」
「何って、夜散歩だよ。A君」
結論から云うとイグニハイド寮内には居らず、 鏡を通って校舎の中庭のベンチに座っていた。
答えは前者のようだ。
「 "唯の" 夜散歩なら佳いんですけどね」
怪訝そうに見詰め、私も彼の隣へ座る。
夜風が心地よく、夜空だって星で満ちていた。
「……………何故この男がここにいる?」
不意に聞こえた低音に後ろを振り返る。
端正なその顔に、頭からは立派な二本の角が生えている。
「ツノ太郎さん、」
「………質問に答えろ、人の子。何故この男の魂が、ここに?」
何時もの穏やかそうな眼差しはそこには無い。
「…召喚術で少々呼び出しを。明日の夕方には還りますよ」
「そうか」
隣の澁澤さんはツノ太郎さんを凝視していた。
…いや、観察と表現した方が正しいのかもしれない。
「君は何時から龍を飼い慣らしていたんだ?龍ならば私で充分だろう」
「…ふん、死人が何を言うか」
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アババババ - 80話の最後のフロイド君の発言で草生えました! (2022年11月19日 23時) (レス) @page32 id: 222bdc0355 (このIDを非表示/違反報告)
あ〜ちゃん(プロフ) - 猫さん» 承認しました!こちらこそよろしくお願いします! (2020年7月23日 21時) (レス) id: 9c71528097 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - あ〜ちゃんさん.......私も好物なので有り難いです......!ぜひ御願いします! (2020年7月23日 21時) (レス) id: fc34ad99ff (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - あ〜ちゃんさん» 柘榴です!よろしくお願いします! (2020年7月23日 18時) (レス) id: f20993b4a3 (このIDを非表示/違反報告)
あ〜ちゃん(プロフ) - 猫さん» OKです!ありがとうございます!! (2020年7月23日 13時) (レス) id: 9c71528097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あ〜ちゃん x他1人 | 作成日時:2020年6月29日 0時