御幸一也 × 狙い撃ち ページ49
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ある日の放課後、私は一人悲しみに暮れていた。
出来るだけ一人になりたい気持ちだったけれども、マネの仕事を休むわけにはいかない。
せめて一人で出来る仕事をやろうと、片っ端から請け負ってこなしていた。
「ああ、やっぱりここに居た」
そんな時に決まって現れるのが、この御幸一也という男だ。
「どうしたの?」
「A先輩、彼氏にフラれたらしいじゃないですか」
「……うん、そうなの。だからそっとしといてくれる?」
御幸の顔も見ずにそれだけ言って、作業に戻ろうとすると、腕を優しく掴まれる。
「何?まだ何か用?」
「こんなの、弱ってるとこに漬け込むみたいで嫌なんてすけど…」
掴まれた腕をぐいっと引かれて御幸との距離が縮まる。
「俺なら、A先輩にこんな顔させねーよ?」
驚いて顔を上げると、御幸の大きな手が私の頬を撫でる。
「A先輩も知ってますよね?俺がチャンスに強いの」
「…それが何?」
「俺にとっては今が最高のチャンスだっつー話」
いつになく真剣な顔をした御幸。「え?」と戸惑っていると、そのまま額に唇が触れた。
「ちょ、御幸っ!?」
目の前で起こるこの状況が理解できなくて。
まだ感覚が残る額に手を当てながら、身体を後ろに引こうとするも、いつの間にか腰に回されていた手のお陰で離れることができない。
「俺、A先輩のことが好き。前からずっと。」
真っ直ぐな御幸の言葉に目を見張っていると、急に御幸がぷっと吹き出してクツクツと喉を鳴らして笑う。
「A先輩、顔真っ赤ですよ」
「っ、うるさい!御幸が急にそんなこと言うから」
「はは、俺の中では急なんかじゃないんですけどね」
「それじゃあ、さっきの言葉は本当?」
「俺、A先輩に嘘ついたことありましたっけ?」
「割りと頻繁に」
「はは、そうでしたっけ?でも本当ですよ。俺の気持ちは」
「…ありがとう。でも今は、」
御幸の気持ちは正直嬉しい。でも今はその気持ちに応えることはできない。
それをはっきり伝えようと言葉を紡ぐと、御幸の人差し指が私の唇に当てられて、遮られる。
「良い返事しか聞く気無いんで。その気になったら返事ください」
いつもの悪戯っ子のような笑みを浮かべて、今度はその人差し指を向け、バーンと撃つ素振りを見せる。
「いつでも俺が狙ってることだけは忘れないでくださいね」
御幸はそれだけ言うと、練習に戻っていった。
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美憂春(プロフ) - いえ!これからも楽しみにしてますね!ヽ(*´∀`)ノ (2017年1月22日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» コメントありがとうございます!最後まで読んでいただき、更には全部好きとまで言っていただき本当に嬉しいです。美憂春さんのコメントにいつも支えられてました。本当にありがとうございました!また別の作品も宜しくお願いします。 (2017年1月22日 23時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 御幸、狙い打ちだー!!ヽ(*´∀`)ノ 私、全部好きです!!(o´艸`) (2017年1月22日 21時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» またまたコメントありがとうございます!亮さんはどんな話にも対応できるのでいつも助かってます(笑)私も自分で書きながらニヤニヤしちゃいました (2017年1月17日 9時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 亮さん、おっとなー!!キャ───(*ノдノ)───ァ笑 にやにやしちゃいました!笑 (2017年1月16日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:げび | 作成日時:2016年10月4日 0時