川上憲史 × 紳士 ページ45
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「ノーリー」
「うわっ、ビックリした…どうしたの、急に」
「構ってくださいな」
言葉の通り、ノリに構って貰おうと部屋を訪れると床で胡座をかいて、背中を向けているノリの姿があった。
扉から入ってすぐの所で名前を呼んでみたけれど返事がなかったのでそのまま勝手に上がって背中にのし掛かると驚いて振り向くノリ。
案の定イヤホンで曲を聴きながら大好きな音楽雑誌を読んでいたらしい。
音楽のことは良く分からないけれど「何聴いてたの?」と訊ねると「Aも聴く?」と片方のイヤホンを差し出してくれたので、ノリの隣に腰を下ろしてイヤホンを耳へと挿した。
「…この曲、好きかも」
「本当?なら、他にもオススメが…」
暫く黙ったまま流れてくる音楽に耳を傾ける。たまたま流れてきた曲が自分の好みに近くて、そう呟けば嬉しそうに笑ったノリがウォークマンを操作する。
「本当、好きだね。音楽」
「え?ああ、うん。好きだよ」
へへっ、と笑うノリ。そんな彼が可愛くて、愛しくて、その頬にちゅっと音を立てて唇を寄せると驚いたノリが顔を真っ赤にして私と距離をとる。
「ななな、何してるのさA!!」
「あーあ、イヤホンとれちゃった」
「いや、とれちゃったじゃなくて!!」
勢い良く離れたことで私の耳からすぽっと抜けたイヤホン。
「そんなに慌てなくても良いじゃん」
「Aが急にそんなことするからでしょ」
「だってノリが音楽に夢中だから」
耳まで顔を真っ赤にしたノリは私が口付けた頬に手を当てて「人の気も知らないで…」とかなんとか呟いていた。
一人で何か考えているようだったのでノリを放って、拡がったままになっている音楽雑誌を手に取る。
やっぱり知らないバンドばかりだなあ、とペラペラとページを捲っていると「A」とノリに呼ばれて顔を上げる。
「分かってると思うけど、俺も一人の高校生男子なわけで…」
「うん?何当たり前のこと言って、んっ…」
パサッと手から拡げていた雑誌が落ちる。目も閉じる暇なんて無いまま、唇が重なって、そして離れる。
「折角、人が我慢してるのに。Aが悪いんだからね」
「……ずるい」
「どっちが」
そのままもう一度、今度はちゃんと目を閉じて、味わうように唇を重ねた。
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美憂春(プロフ) - いえ!これからも楽しみにしてますね!ヽ(*´∀`)ノ (2017年1月22日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» コメントありがとうございます!最後まで読んでいただき、更には全部好きとまで言っていただき本当に嬉しいです。美憂春さんのコメントにいつも支えられてました。本当にありがとうございました!また別の作品も宜しくお願いします。 (2017年1月22日 23時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 御幸、狙い打ちだー!!ヽ(*´∀`)ノ 私、全部好きです!!(o´艸`) (2017年1月22日 21時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» またまたコメントありがとうございます!亮さんはどんな話にも対応できるのでいつも助かってます(笑)私も自分で書きながらニヤニヤしちゃいました (2017年1月17日 9時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 亮さん、おっとなー!!キャ───(*ノдノ)───ァ笑 にやにやしちゃいました!笑 (2017年1月16日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:げび | 作成日時:2016年10月4日 0時