原田雅功 × キューピット ページ44
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1年の時に出会って、2年になって主将とマネージャーという立場で自然と一緒に居る時間も増えて。
それでも心に秘めた想いは伝えられないまま、最後の夏を迎えようとしていた。
「雅」
「これか?」
「あたり!ありがとう」
「A」
「はい、これでしょ?」
「あぁ、悪いな」
付き合いも長くなれば、お互い名前を呼ばれただけで相手が何を求めているのか大体分かるようになった。
「雅さんとAさんって彼氏彼女通り越して、熟年夫婦みたいだよね」
「えっ!?」
そんな私たちに対する急な成宮の発言で雅が飲んでいたドリンクを噴き出す。
ゴホゴホと噎せる雅功の背中を擦っていると「でも…」と成宮が続ける。
「言わなくても分かることばっかりじゃないだろうし、言うべきことは言わないと。ね、雅さん」
何か意味深な言葉を残すと多田野を連れてブルペンへと去っていってしまった成宮。
二人きりになってなんとなく気まずい思いを抱えながら雅と話をする。
「な、何言ってるんだろね」
はは、と小さく笑いを零しながら雅の顔を見ると口許に手を当てて真剣な顔をしていた。
「…雅?どうかした?」
「アイツの…鳴の言う通りかも知れねぇな」
「言う通りって…何が?」
まさか熟年夫婦みたいってこと?…まあ、それは無いか。と自分の中で考えてみたけれど答えは出ず。
きょとんと首を小さく傾げて訊ねると真っ直ぐ私を見据えた雅が話を続ける。
「Aはいつも良く見てくれてて、多分部内じゃ一番俺のことを分かってくれてる」
「何、急に…照れるんだけど」
「いつも俺の気持ちを汲み取ってくれて感謝してる」
「ちょっとやめてよ」
「いいから聞け。…鳴の言う通り何も言わなくても、分かってくれるAに甘えてちゃいけねぇと思った」
急な言葉に照れ臭くて、顔を背けた私の肩をガッシリと掴む雅。
それにビックリして顔を向けると雅も顔を赤くしていた。
「ずっとAのことが好きだ」
「…嘘」
「嘘なんかじゃねぇ。本当は大会終わるまでは黙っとくつもりだった…だから返事は、」
「好き。私も、雅のことが好き」
昂る気持ちに身を任せて雅に勢い良く抱き付くと、雅はそっと優しく抱き止めてくれた。
「これで本当の熟年夫婦になれるね」
「気が早えな」
二人で笑い合っていると「二人とも感謝しなよ」とプルペンに行ったはずの成宮がいつの間にか満足気に私たちを見守っていた。
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美憂春(プロフ) - いえ!これからも楽しみにしてますね!ヽ(*´∀`)ノ (2017年1月22日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» コメントありがとうございます!最後まで読んでいただき、更には全部好きとまで言っていただき本当に嬉しいです。美憂春さんのコメントにいつも支えられてました。本当にありがとうございました!また別の作品も宜しくお願いします。 (2017年1月22日 23時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 御幸、狙い打ちだー!!ヽ(*´∀`)ノ 私、全部好きです!!(o´艸`) (2017年1月22日 21時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» またまたコメントありがとうございます!亮さんはどんな話にも対応できるのでいつも助かってます(笑)私も自分で書きながらニヤニヤしちゃいました (2017年1月17日 9時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 亮さん、おっとなー!!キャ───(*ノдノ)───ァ笑 にやにやしちゃいました!笑 (2017年1月16日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:げび | 作成日時:2016年10月4日 0時